壺齋散人の 映画探検
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ミュージカル「雨に唄えば」:ジーン・ケリーのダンスと歌



「雨に唄えば(Singin' in the Rain)」は、アメリカン・ミュージカルの最高傑作の一つと言ってよい。とにかく理屈なしに面白い。老人から子供まで男女を問わず楽しめる。その楽しさは人種や国籍を超えたものだ。実際日本人もこの作品を長く愛し続けて来た。主題歌は今でも日本中の街角を流れている。

「巴里のアメリカ人」で主演したジーン・ケリーがこの作品では共同監督を務めている。彼の持ち味は軽快なステップダンスに合わせた甘い歌声だから、この映画でもそれを最大限発揮している。相手女優もいい。恋人役のデビー・レイノルズは無論、人気女優を演じたジーン・ヘイゲンがまたいい。頭はちょっといかれているが、体はよだれが出るほどセクシーで、どこか憎めないキャラクターというのは、アメリカ人理想の女性像らしい。その理想の女性像をジーン・ヘイゲンは演じている。

そのジーン・ヘイゲンはサイレント映画最後の大女優なのだが、いかんせん声が悪い。サイレント映画では声の良しあしは問題にならなかったが、トーキーではそうはいかない。声が悪いと生きてはいけない。というわけで、映画の制作者はデビー・レイノルズの声を替え玉に使う。ジーン・ヘイゲンは、デビーをいつまでも自分の替え玉に使おうとするが、デビーに惚れたジーン・ケリーがそれをさせない。観客の見ている前で声のからくりをばらしてしまう。その結果ジーン・ヘイゲンは落ちぶれて、デビーがスターになるというわけだ。

こう書くと、ジーン・ヘイゲンが悪玉のように聞こえるが、実はそうではない。彼女は彼女なりに魅力的な女なのだ。ただ声が悪いだけなのである。

この映画はミュージカルにしてはセリフの部分が非常に長い。ところがそのセリフというのが殆ど中身がない。中身のないセリフならいっそない方が良い。全編これミュージックでもいいくらいだ。

この映画の最大の魅力は何と言ってもジーン・ケリーがステップダンスをしながら歌うところだ。特に雨の中で例の主題歌を歌いまくるところは圧巻だ。これは映画史上に残る名シーンと言ってよい。



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