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ミュージカル「オペラ座の怪人」:美女に思い焦がれる怪物



「オペラ座の怪人(The Phantom of the Opera)」は、1980年代から90年代にかけてロンドンやニューヨークの舞台でロングランになったほか、何度も映画化された。内容は怪物が美女に思い焦がれるといったもので、いわば「美女と野獣」のバリエーションといってもよい。欧米ではこの手の話が非常に受けるらしく、ほかにも様々なバリエーションがある。あの「キング・コング」なども野獣が美女に惚れるという点では、同じような趣向といってよいだろう。

こういうものを見せられると、我々日本人にはなかなか納得できないところが多いが、欧米人つまりヨーロッパ人種はそうではないらしい。彼らとりわけヨーロッパ人種の女たちには、野獣との交わりにあこがれる傾向があるのではないかと思わせられる。それはやはり、古来獣と共存し、獣の肉を食って生きて来た彼らヨーロッパ人種ならではの傾向だろうと、これは野獣趣味とは縁のない筆者などには思わされるところだ。

もっともこのオペラの主人公は野獣ではない。立派な人間だ。ところが子どもの頃から顔にひどい怪我の後があって、それで表情が醜く、まるで獣のような顔になってしまった。その獣のような顔の男が、一人の女に惚れる。その女というのが、孤児となってオペラ座の女主人に拾われたという過去を持つ。一方獣のような顔の男も、その女主人によって拾われ、オペラ座の中で人目を忍んで生きてきたのだ。だから二人は、血はつながってはいないが、実質的には兄妹のような間柄だったわけだ。もっとも互いの存在を明確に意識していたのは、男のほうだけであって、女のほうは男の本当の姿を知らない。ただ影になって自分を支えてくれた人がいると思っているだけだ。

そんな二人の間に第三の男がからんでくる。女の幼なじみだったという男が、成人した後にその女に近づいてきて、互いに深く愛し合うようになる。すると獣のような男は耐えがたい嫉妬の念に襲われて、二人の恋を妨害し、出来うれば女を自分のものにしたいと願う。

しかし結局二人の愛の強さに負けて、自分から身を引く、というのがこの映画の筋書きだ。言ってみれば男女の三角関係なわけで、そう言う意味ではなんら珍しい話ではないのだが、男の一人があたかも獣を思わせるような醜い顔だというところが、この物語にユニークさをもたらしている所以だ。

普通そんな醜い顔の男は女の愛を勝ち取るなど論外なはずだが、この映画の中では、女はその醜い男に複雑な感情を持つ。それはおそらく二人が不思議な運命の糸によって結ばれているという自覚によるものなのだろうが、見る者によっては、その女が獣姦の趣味を持っているのではないかと思わせられるところもある。そういうわけで、この映画は我々日本人にはなかなか理解できないのであるが、ヨーロッパ人種には理解どころか共感を覚えさせるところもあるらしいのだ。



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