壺齋散人の 映画探検
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ビリー・ワイルダー「麗しのサブリナ」:女性にとってのアメリカン・ドリーム



ビリー・ワイルダーの1954年の映画「麗しのサブリナ(Sabrina)」は、前年の「ローマの休日」で旋風を巻き起こしたオードリー・ヘップバーンの人気を不動のものにした作品だ。小生もかつてオードリーのファンだったが、それは彼女の美貌もさるものながら、その演技のコケティッシュな魅力にもよる。「ローマ」では美貌一点張りだったものが、この映画では演技力でも人を魅了したものだ。小生のようなアジア人種の心まで捉えたオードリーは、一時期の白色人種の女性の代表と称されるにふさわしかった。

テーマは、アメリカ人が好きなアメリカン・ドリームの女性版といったところだ。アメリカン・ドリームは、男の場合には裸一貫で自分の実力だけで出世することをいうようだが、女の場合には、その美貌で金持ちの男を魅了し、いわゆる玉の輿におさまることを意味するらしい。この映画の中のオードリー・ヘップバーンは、金持ちに仕える運転手の娘なのだが、料理の勉強に出かけたパリで、いろいろ自分に磨きをかけて、魅力たっぷりとなって帰宅し、その魅力で主人の息子の愛を勝ち取るというものである。

主人というのは、アメリカ有数の実業家で、二人の息子がいる。ハンフリー・ボガート演じる上の息子は、仕事一点張りで女気のない生き方をしてきたが、弟のほうは、何度も結婚に失敗し、いままた新しい結婚話に面している。その弟のほうをオードリー演じるサブリナは愛しているのだが、兄弟の間の駆け引きに付き合っているうちに、次第に兄のほうに心が傾く。兄は、はじめは家のためにサブリナをパリに送り戻そうとしたりするが、そのうちサブリナの魅力に降参して、自分も一緒にパリにいく決意をするのである。

オードリーもさることながら、ボガートの演技も見ものだ。ハンフリー・ボガートといえば、ニヒルな色男といった役柄が多いのだが、この映画の中では、若くて魅力のある女に肝を抜かれた好色漢といった役柄をこなしている。オードリーを見つめるときのボガートの表情は、ニヒルどころではなく、幸せいっぱいといった無邪気さを感じさせるほどだ。ワイルダーは、コメディタッチの映画作りが得意なのだが、それがこの映画でも十分に発揮されている。なにしろ、弟役を演じたウィリアム・ホールデンまでがコミカルな演技をさせられているのである。

そんなわけでこの映画は、アメリカ人の好きなアメリカン・ドリームの女性版を、コメディタッチで描いたラブ・ロマンスと言えよう。




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