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ビリー・ワイルダー「七年目の浮気」:マリリン・モンローの魅力



ビリー・ワイルダーの映画「七年目の浮気(The Seven Year Itch)」は、セクシー女優として売り出しちゅうだったマリリン・モンローの人気を更に沸騰させた作品である。地下鉄の通気溝の上に立ったマリリンの衣装が、通りがかった列車の巻き起こす烈風に煽られてまくりあがるシーンは、映画史上もっとも話題性に富んだものだ。

マリリン・モンローといえば、ブロンドの髪をなびかせる頭の空虚な若い女というイメージが強い。じっさいこの映画のなかのマリリンは、そのイメージどおりの演技をしている。おそらくこの映画が、そうしたイメージを固定させたのだと思われる。

ワイルダーはマリリンを、売り出し以前から端役として起用したことがあったが、決して頭の弱い女というイメージではなかった。それがこの映画では、そういうイメージに染められている。マリリンにとってよかったかどうかは別にして、セクシーシンボルとしてのマリリン・モンローのイメージ確立にとっては決定的な役割を果たしたわけだ。

タイトルにあるItchとは、「かゆみ」という意味である。結婚七年目ともなれば、女房に飽きが来て、他の女が気になる。そのもぞもぞした気分をItchという言葉で表現したのだろう。この言葉自体には、浮気という意味はないようだ。

タイトルが示唆しているとおり、結婚七年目の男が、若い女に浮気心をそそがれるというような内容だ。筋書きらしいものはない。女房と子どもを避暑のために送り出した男が、独身気分を味わいながら、突然現われた若い女と恋愛ごっこをするというような内容である。場面の殆どは、男のアパートの部屋の中で展開される。ほとんどすべて、男女のエロチックな触れ合いである。

ひとつだけ映画を見に外出するシーンがあって、そのシーンの中で、例のまくるあがりの場面が披露される。夜の路上ということになっており、したがってそんなに明るくはなく、しかも一瞬のことなので、たいしたインパクトはないのだが、それでもとんでもないブームを巻き起こした。やはりマリリンの魅力が、このエロチックな動作によって、世の男たちのすけべ心を刺激したのだろう。




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