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ひろしま 石内都・遺されたものたち



石内都は日本を代表する女性写真家だ。衣装に強い関心を持っていたそうだ。その石内が、2011年10月から翌年2月まで、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学人類学博物館で、ひろしまをテーマにした写真展を開いた。展示された写真はみな、被爆者が生前身につけていたものである。それらを見ると、被爆して死んだ死者の姿を直視するに劣らない迫真性を感じる。それが見るものの心を直撃する。

この展覧会をテーマにしたドキュメンタリー映画を、アメリカの女性映画作家リンダ・ホーグランドが作った。題して「ひろしま 石内都・遺されたものたち」。「遺されたものたち」というのは、被爆者たちの遺品である。その遺品を展示した模様を紹介しながら、ひろしまの意味を考えて欲しいというのが、映画の趣旨である。被爆者の縁者の証言とか、カナダに住んでいる日本人とか、写真を見た人々の感想とかが合わせて紹介される。ホーグランドは、そうした周辺的な情報の収集を含めて、この映画の製作に二年かけたそうだ。

個々の写真の多くは、広島にある原爆資料館から借りたそうだ。その資料館は、原爆の記憶を風化させないように、遺品をはじめ、被爆に関連したさまざまなものを収集・保存しているそうだ。その一部は、対外的に公開されている。小生も、広島を訪れたときに、原爆資料館でそういった遺品を見て、たいそうショックを受けたことがあった。原爆が落とされた瞬間のその時間のまま止まってしまった時計とか、地面に影だけが映ってその持ち主はあとかたもなく消えてしまった写真とか、そういうものを見ると、やむにやまれぬ動揺を感じるものだ。

石内の写真にも、そうした迫真性があるのだろう。対象そのものが生々しいところに、石内の写真技術がその生々しさに拍車をかける。多くの写真はフルサイズに拡大され、圧倒的な迫力で見るものにせまってくるようなのである。その迫力が、核を阻止する力につながればよいのだが、と思いながら見た次第であった。




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