壺齋散人の 映画探検
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ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ



1999年公開の映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」は、キューバ音楽の俄バンドの活動振りを追ったドキュメンタリー作品である。ロード・ムーヴィーやドキュメンタリー映画に定評のあるドイツ人監督ヴィム・ヴェンダースが手がけ、アメリカやキューバで上映された。キューバ音楽の魅力を改めて認識させたものとして、大きな反響を呼んだ。

「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」とは、1990年代の末近くに俄結成されたキューバ音楽バンドの名称であり、また彼らが出したアルバムの名称でもある。このバンドのメンバーは、かつてはキューバ音楽(ムシカ・クバーナ)を代表するミュージシャンだったが、いまは年老いて忘れ去られようとしていた。そんなかれらを結集してバンドを作り、欧米で公演を重ねたところ大きな反響を呼んだ。そんなバンドのメンバー一人一人について紹介しながら、キューバ音楽の魅力を伝えようというのがこの映画の目的である。

その目的は十分に達成されたようだ。欧米の公演ではすさまじい拍手を浴びたし、小生のようにキューバ音楽に親しんでいないものにとっても、十分魅力的だった。とにかく、音楽を聴いているだけでも楽しい。

そこに、キューバ人の音楽への情熱が重ねあわされる。キューバ音楽というのは、アフリカからやってきた黒人の音楽を受け継いでおり、その点ではアメリカのジャズと重なるところもあるのだが、ラテン音楽の一員として、インディオの音楽文化も反映しているらしい。この映画に出てくるバンドのミュージシャンのなかには、黒人系の者もいれば、インディオ系の者もいたりで、多民族の融合の結果ムシカ・クバーナが成立したと感じさせる。

キューバ人の国を愛する気持も伝わってくる。キューバ人は貧しいが、その貧しさを恥だとは思わない。国民皆が自分と同じく貧しいところでは、その貧しさへは恥には結びつかないのだ。とにかくキューバ人は楽天的らしい。そのキューバは、カストロの革命後、アメリカをはじめ西側諸国から疎外されてきたが、1990年代に入って自由化が進み、欧米との交流が盛んになった。この映画はそんな時代風潮を背景にして作られたものである。

バンドのメンバーのそれぞれについて、生い立ちとか音楽への情熱とかが語られる。その中で、90歳の老ピアニストの言い草が面白い。かれは90歳にして五人の子どもを持っているのだが、それでもまだ不足で、いま六人目をこしらえようとしていると言うのだ。いくら勢力的なキューバ人でも、90歳で子どもを作ろうというのは、実に見上げた姿勢である。




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