壺齋散人の 映画探検
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黒沢明の世界:作品の鑑賞と解説


日本映画を国際的に認めさせた偉大な映画監督の中でも、黒沢明はもっとも偉大な人物だったといってよい。彼が1950年に作った映画「羅城門」は翌年のヴェネツィア映画祭でグランプリをとり、日本映画の水準の高さを世界に認めさせた。これがきっかけとなって、翌年以降溝口健二や衣笠貞之助の作品が相次いで世界映画祭のグランプリを受賞し、日本映画は一躍世界のメジャーになったのである。


黒沢明はついで「七人の侍」を作り、これが大きなセンセーションを巻き起こした。この映画は、テーマ設定といい技法といい、映画の歴史に残る記念碑的な作品であり、次の世代の世界中の映画作家に及ぼした影響は甚大なものがあると評価されている。

「羅城門」と「七人の侍」は、娯楽性の強い作品だったが、黒澤明の作風は非常に広いことで定評がある。デビュー作の「姿三四郎」は青春映画であり、戦時中に作って一旦お蔵入りとなり、戦後しばらく経ってから公開された「虎の威を踏む男達」は歌舞伎「勧進帳」に題材をとったコメディタッチの作品だった。戦後には、「わが青春に悔いなし」のような民主主義を謳歌する映画を作る一方、「すばらしき日曜日」を始め、戦後日本の混乱をドキュメンタリー風に反映させた一連の映画を作った。それらの映画を見ると、戦後日本の原風景がまざまざと想起される。

黒沢明の初期の映画を代表する作品は「生きる」である。この映画は癌患者の生きることへのこだわりを描いたもので、人間いかに生きるべきかという課題をテーマにしたヒューマンドラマとして黒澤の名声を高めた。黒澤のそうしたヒューマンな傾向は、後に「赤ひげ」でも発揮されている。一方で、シェイクスピアのマクベスに題材をとった「蜘蛛巣城」とかゴーリキー原作の「どん底」など、有名な文芸作品の黒澤なりの映画化も試みている。その後、「用心棒」とか「椿三十郎」といった娯楽作品も手掛け、映画の巨匠としての名声をいよいよ高めていった。

黒沢明の作風の特徴は、明確な問題意識に導かれた骨太なテーマ設定と、動的な画面構成にある。モンタージュを始めとしたさまざまな技法を駆使して、ダイナミックな画面を作り出している。典型的な例は「七人の侍」で、有名な雨の中の闘いのシーンでは、八台のカメラを同時に回し、それらをモンタージュすることで、劇的な画面構成に成功した。そうした劇的な要素を好む傾向は、時代劇における殺陣などにも見られ、黒澤映画の大きな特徴となっている。たとえば、人を斬る時に「シュバッ」という音をたてるところなどは、黒澤の発明である。

黒沢明の作った映画は21世紀の今日においても、なお新鮮さを失っていない。そんな黒沢映画の世界を、作品を鑑賞しながら適宜解説したい。




姿三四郎:黒澤明

虎の尾を踏む男達:黒澤明
わが青春に悔なし:黒澤明
素晴らしき日曜日:黒沢明の世界
酔いどれ天使:黒沢明
静かなる決闘:黒澤明
野良犬:黒沢明の世界
醜聞:黒澤明
羅生門:黒沢明の世界
白痴:黒澤明
生きる:黒沢明の世界
七人の侍:黒沢明の世界
生きものの記録:黒澤明
蜘蛛巣城:黒沢明の世界
どん底:黒沢明の世界
隠し砦の三悪人:黒沢明の世界
悪い奴ほどよく眠る:黒沢明の世界
用心棒:黒沢明の世界
椿三十郎:黒沢明の世界
天国と地獄:黒澤明
赤ひげ:黒沢明の世界
どですかでん:黒沢明の世界
デルス・ウザーラ:黒澤明のソ連映画
影武者:黒沢明の世界
乱:黒沢明の世界



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