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男はつらいよシリーズ:作品の鑑賞と解説


「男はつらいよ」シリーズは、主人公フーテンの寅の名をとって「寅さん」シリーズとも呼ばれる。本編48作品に特別編2作を加え全50編からなるシリーズは、世界映画史上最長のシリーズとしてギネスに認定されているほどである。もともと、1968年10月から翌年3月にかけてテレビドラマとして放映されたものだったが、あまりにも評判がよかったので、ファンの要望に応えて映画化されたいきさつがある。当初は二作だけ作る予定であり、三作目と四作目については、山田洋次は監督をしていない(脚本には参加している)。だが、少しづつ人気が上ってきて、とくに八作目以降はいずれも大ヒットを飛ばすようになり、長期シリーズへと成長していった。

一作目の「男はつらいよ」が、シリーズ全体を象徴するような作品である。それ以後のすべての作品に共通する要素が盛られている。それを簡単にいうと、柴又に暮らす団子屋を舞台に、主人公のフーテンの寅次郎とその妹、及び寅次郎の伯父と伯母が主な登場人物であること、寅次郎には放浪癖があり、毎回放浪の旅先と柴又の団子屋とを行き来していること。その寅次郎は、旅先でかならず恋をするのであるが、その恋はいずれも成就しない、その原因は寅次郎の引っ込み思案にある。時には女のほうが強いアクションをかけてくることもあるが、そういう時に限って寅次郎は尻込みしてしまう。自分には結婚して世帯を持つことなどありえないと思っているからである。

その寅次郎は、毎回団子屋に帰るたびに、伯父夫婦や近隣の人たちと悶着を引き起こす。近隣の人を代表するのは、隣で印刷屋をやっている「たこ」という親爺とか、御前様と呼ばれている僧侶などである。そのタコの経営する印刷屋の職人である博と、寅次郎の妹さくらは結婚するのである。さくらは、兄の寅次郎を心から愛しており、つねに寅次郎の身を案じている。寅次郎が帰ってくると、余裕のない財布から小遣いを与えたり、時には寅次郎の無軌道ぶりを厳しく批判したりする。寅次郎にとっては、唯一心をひらいて話し合える存在だ。

その寅次郎は、日本全国を渡り歩くテキヤ稼業という設定であり、かれが毎回日本の各地に出没するのは、商売のためなのである。テキヤは金にならない稼業であり、寅次郎はいつも金に困ってピーピーしていることになっている。それでも旅先で女と仲良くなり、場合によっては追いかけられることもあるのは、その人徳によるものだ。寅次郎は実に愛すべき人物なのである。

その女たちと寅次郎との恋のやりとりが毎回のテーマとなっている。毎回を彩る女性たちは、俗にマドンナと呼ばれている。マドンナには複数回出てくる女性もある。浅丘ルリ子が最多出演回数を誇り、準レギュラーの位置づけである。このシリーズの面白いところは、寅次郎が帰るべき家を持っているということで、どんなことがあっても、家に帰って落ち着けるということが、寅次郎をあくなき冒険の旅に駆りたてるバネになっているのである。そのあたりは、童話の原型を思わせる。世界中に点在する童話には、主に子供である主人公が、旅に出て様々な冒険を体験し、最後には自分の家に戻ってくるというパターンの話が非常に多いのであるが、この寅さんシリーズもそのパターンに従っているように思える。このシリーズの長命な理由は、そんなところにあるのかかもしれない。

ここでは、寅さんシリーズのうち、三十三本の作品について、鑑賞しながら適宜解説・批評を加えたいと思う。


男はつらいよ:寅さんシリーズ第一作

続・男はつらいよ:寅さんシリーズ第二作


男はつらいよ望郷篇:寅さんシリーズ第五作

男はつらいよ純情篇:寅さんシリーズ第六作

男はつらいよ奮闘篇:寅さんシリーズ第七作

男はつらいよ寅次郎恋歌:寅さんシリーズ第八作

男はつらいよ柴又慕情:寅さんシリーズ第九作

男はつらいよ寅次郎夢枕:寅さんシリーズ第十作

男はつらいよ寅次郎忘れな草:寅さんシリーズ第十一作

男はつらいよ寅次郎子守唄:寅さんシリーズ第十四作

男はつらいよ寅次郎相合い傘:寅さんシリーズ第十五作

男はつらいよ寅次郎夕焼け小焼け:寅さんシリーズ第十七作

男はつらいよ寅次郎純情詩集:寅さんシリーズ第十八作

男はつらいよ寅次郎我が道をゆく:寅さんシリーズ第二十一作

男はつらいよ翔んでる寅次郎:寅さんシリーズ第二十三作

男はつらいよ寅次郎ハイビスカスの花:寅さんシリーズ第二十五作

男はつらいよ寅次郎かもめ歌:寅さんシリーズ第二十六作

男はつらいよ浪花の恋の寅次郎:寅さんシリーズ第二十七作

男はつらいよ寅次郎紙風船:寅さんシリーズ第二十八作

男はつらいよ寅次郎あじさいの恋:寅さんシリーズ第二十九作

男はつらいよ口笛を吹く寅次郎:寅さんシリーズ第三十二作

男はつらいよ寅次郎真実一路:寅さんシリーズ第三十四作

男はつらいよ柴又より愛をこめて:寅さんシリーズ第三十六作

男はつらいよ知床慕情:寅さんシリーズ第三十八作

男はつらいよ寅次郎物語:寅さんシリーズ第三十九作

男はつらいよ寅次郎サラダ記念日:寅さんシリーズ第四十作

男はつらいよぼくの伯父さん:寅さんシリーズ第四十二作

男はつらいよ寅次郎の休日:寅さんシリーズ第四十三作

男はつらいよ寅次郎の告白:寅さんシリーズ第四十四作

男はつらいよ寅次郎の青春:寅さんシリーズ第四十五作

男はつらいよ拝啓車寅次郎様:寅さんシリーズ第四十七作

男はつらいよ寅次郎紅の花:寅さんシリーズ第四十八作

男はつらいよお帰り寅さん:寅さんシリーズ第五十作



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