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男はつらいよ望郷編:寅さんシリーズ第五作



「男はつらいよ望郷編」は、寅さんシリーズ第五作、1970年夏に公開された。愛する妹から浮草生活を批判され、汗と油にまみれながら地味に生きなさいと説教された寅次郎が、その言葉を実践しようとして、めずらしくけなげに働く姿を描いている。そこに親子の情愛とか、いつもながらの失恋を絡ませている。

昔世話になった親分が危篤だと聞いた寅次郎は、舎弟をつれて札幌まで出かけていく。金がないので金策に走った結果、妹のさくらが一万円札を出してくれた。第二作で寅次郎が小遣いとして与えた金だった。その金で二人で札幌までゆき、宿に泊まったりタクシーに乗ったりするのだが、いくら物価がやすかったとはいえ、一万円でそこまでできるはずはない。そのへんはうるさく詮索しないでほしいということだろう。

親分が一人息子に会いたいというので、寅次郎は探し出して説得する。しかし息子は父親を恨んでいて、会いたくないと言い張る。話を聞くと筋が通っているので、寅次郎はあきらめる。ついても親分が息子にも拒まれるのは、いい加減な生き方をしたためだ。自分はそうなりたくない。そう思った寅二郎は俄然心を入れ替え、堅気の生活をめざす。

というわけで、寅次郎は豆腐屋のでっちになるのだが、それには寅一流の目論見もあった。豆腐屋の娘にぞっこん惚れ込んでしまったのだ。ところがその娘には別に恋人がいて、寅次郎はふられてしまう。かくして人生に失望した寅次郎は、妹の言葉もむなしく元の世界に舞い戻りする。まさに主題歌の歌の文句にある通り、「奮闘努力の甲斐もなく」である。

この映画では、寅次郎とさくらとの兄妹愛が中心になっていて、マドンナ役とのやりとりは実にあっさりしている。マドンナを延じた長山藍子があっさりした印象だから、ちょうどよいのかもしれない。


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