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男はつらいよ寅次郎恋歌:寅さんシリーズ第八作



「男はつらいよ寅次郎恋歌」は寅さんシリーズ第八作、公開は1971年暮。さくらの夫博の母が死に、博夫婦と寅次郎が備中高梁の葬儀の場で出会うエピソードと、柴又にカフェを開店した中年女性への寅次郎の恋心を描く。あいかわらず寅次郎は、女に惚れると前後の見境がつかなくなる精神薄弱者として描かれている。

博は久しぶりに父や兄弟と再会する。兄弟は互いに打ち解けない雰囲気である。志村喬 演じる父親は、大学教授で研究熱心であり、妻が死んだあとは一人で好きな研究を続けたいという。長男はそんな父親を人質にとって、家を乗っとるつもりでいる、といった具合で、この一家は破綻に瀕している。

お通夜の席に突然寅次郎が現れ、例によって周囲を騒然とさせてさくらをやきもきさせる。その挙句に、志村の家に居候を続ける始末。そんな寅次郎を志村は、無聊をなぐさめる相手として重宝するのだ。

柴又に帰った寅次郎は、付近に開店したカフェのマダム(池内淳子)に一目惚れ。池内の子供を手なずけて、なんとか池内の歓心を買おうとする。そんな寅次郎を池内はたのもしく思うだが、当然のことながら恋愛感情はもたない。そのことを思い知った寅次郎は、身を引いてまた旅に出る、というような内容である。

見どころは、たびたび繰り返される一家の喧嘩騒ぎだ。寅次郎をおいちゃんがたしなめると、寅次郎がくってかかる。ときには取っ組み合いの喧嘩になる。だがすぐに忘れて仲直りする。そのことの繰り返しだ。このように、互いに突っかかりあわなければ接することができない人間関係というものもありうるのだと思わせられる。

折からオイルショックと円高で日本経済は大不況に陥っていた。その不況が、タコ社長のような中小企業経営者にはこたえる。そんな時代の雰囲気も感じさせる作品だ。


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