壺齋散人の 映画探検 |
HOME|ブログ本館|美術批評|東京を描く|水彩画 |動物写真|西洋哲学 |プロフィール|掲示板 |
「男はつらいよ寅次郎忘れな草」は、寅さんシリーズ第十一作、1973年の夏に公開。マドンナ役に浅丘ルリ子が初めて起用された。彼女はこのあとたびたび出演しており、シリーズの準レギュラーといってもよい存在となった。映画はそんな浅丘演じるリリーと寅さんとの「友情」を描く。「友情」というのも他ではない、リリーは寅さんに強い愛情を抱くのだが、寅さんのほうはなぜか及び腰なのだ。そんな二人のすれ違いのようなものが、この作品のミソである。 亡父の二十七回忌の席にたまたま帰って来た寅さんが、例のとおり一悶着を起した後北海道に飛び、そこでリリーと出会う。最初は網走行きの夜汽車の中でリリーが泣いているところを見かけるのだが、網走で接近し、急速に仲良くなる。その後柴又に戻った寅さんは、たまたまそこでリリーと再会。不思議な縁だと思いながら、二人はいっそう仲良くなる。そんな二人を、妹のさくらをはじめ、周りの者たちが気をもみながら見守るというような内容だ。 結局二人は結ばれることなく、リリーはすし屋の亭主の嫁になり、寅さんは網走に戻って、かつて世話になった酪農家の一家を訪ねる。この一家で歓待された寅さんは、かれらと一緒にいると、まともな人間になれたような気がするのだ。 最初の頃の場面で、さくらが息子にピアノを買ってやりたいと望むシーンがある。買ってやりたいのだが、アパートの部屋が狭くて置けないのを悲しむ。これ以前の作品では、彼女たち一家はアパートから一軒家に引っ越す予定になっていた。その予定は中止になったのだろうかと、画面を見ながら感じたところだ。 浅丘ははすっぱ女を演じている。ちょっとはすっぱすぎて、それまでのマドンナのイメージとはだいぶ違う。寅さんが彼女に対して足踏みする姿勢を見せるのは、彼女のはすっぱなエネルギーに圧倒されたからだというふうに伝わってくる。そのはすっぱ女がどうしたわけで、かたぎの男と結ばれたのか。ちょっと消化不良になるところもある。 |
HOME | 日本映画 | 山田洋次 | 男はつらいよ | 次へ |
作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2013-2021 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |