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男はつらいよ寅次郎純情詩集:寅さんシリーズ第十八作



「男はつらいよ寅次郎純情詩集」は、寅さんシリーズ第十八作、1976年暮れの公開。寅さんが、ある母親の女とその娘の両方に惚れた挙句、情がより強く移った母親のほうに死に別れるという内容。その母親を京マチ子が演じ、娘を檀ふみが演じた。

檀ふみ演じる娘は、満男のクラスの産休代替の受け持ち教員。その彼女が家庭訪問のために虎屋を訪問した際に、たまたま帰省してきた寅さんが一目惚れ。満男のことをさしおいて、教員相手に勝手なことをしゃべりまくるので、さくらはじめ家族の者は大いに怒る。

しばらくして教員が、自分の母親とともに再訪する。京マチ子演じるその母親は、女学生のときに虎屋をよく訪れていて、さくらや寅さんの子供の頃を覚えていた。そんなことから寅さんは、愛の対象を娘から母親に移し、一日欠かさず母親を訪ねては、東京の名所案内などをする。

母親は重病にかかっておおり、医師からは余命いくばくもないと言われている。そんな母親にせめて好きなことをさせたいと思った娘は、寅さんが母親を慰めてくれることを喜ぶ。やがて母親は死に、しめやかに葬儀が営まれる。愛した人を亡くした寅さんは意識消沈するが、旅先で娘と再会し、娘が元気よく生きていることに安どの気持ちを抱く、というような内容の話である。

甲州の別所温泉がポイントになっている。映画のメーンストーリーではなく、サブストーリーの舞台として映されるのだが、なかなか風情豊かに映っている。小生も別所温泉は訪ねたことがあるが、その際には垢ぬけた近代的な雰囲気を感じたものだ。ところがこの映画の中の別所温泉は、木造の古びた旅館が立ち並ぶレトロな雰囲気を感じさせた。わずかな時間の間に、かなりな変貌を遂げたのであろう。

タイトルの純情詩集とは、その別所別所温泉で出会った旅の一座の出し物「不如帰」からきているようだ。その旅の一座と寅さんは、以前にも会ったことがあり、なつかしさのあまり、旅館で大判振舞いをする。その結果宴会を含めた宿代が払えなくなり、警察に突き出される失態を演じる。しかし妹のさくらは、なにやかや言いながらも、そんな兄を別所温泉の警察署まで引取りに行くのだ。

京マチ子は、死を目前にした老女を演じているのだが、痛々しい雰囲気は伝わってこない。年をとったとはいえ、例の華やかで豊満なイメージは少しも損なわれていないのである。


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