壺齋散人の 映画探検
HOMEブログ本館美術批評東京を描く水彩画動物写真西洋哲学 プロフィール掲示板



男はつらいよ寅次郎サラダ記念日:寅さんシリーズ第四十作



「男はつらいよ寅次郎サラダ記念日」は、寅さんシリーズ第四十作、公開は1988年暮。三田佳子演じる女医と、寅次郎との触れ合いがテーマ。女医は寅次郎を男として愛するわけではないが、人間として強く惹かれる。それに対して寅次郎も、強く反応するが、例のごとく自分から身を引くといった内容。それに早稲田で短歌を勉強している女医の姪が絡んでくる。その姪が「サラダ記念日」で有名になった俵万智をイメージしていることは、姪の名が「たはらまち」をもじった「はらだまちこ」になっていること、また「サラダ記念日」から短歌の引用がなされていることからわかる。

旅先の信州で老婆の家に泊まったことがきっかけで、その老婆の主治医である女医と寅次郎は知り合いになる。女医は、亭主に死なれたあと、子供を東京の母親にあずけ、自分は信州小諸の病院に単身赴任している。彼女は、医者としても、また一人の人間としても、なにか割り切れぬものを感じている。その割り切れなさを、寅次郎を通じて割り切ってみようとする。しかし生来能天気な寅次郎には、人生をむつかしく考える習慣はない。女医の悩みにどう答えていいのかわからぬのだが、かれのその能天気さが、女医の悩みを和らげてくれるというわけである。

その二人の間に姪のはらだまち(三田寛子)が絡む。寅次郎はこの姪がすっかり気に入って、甥の満男に、お前も早稲田に入れとすすめる。満男はまだ進路に悩んでいるのだ。寅次郎は、その姪に会いに早稲田に出かけ、そこで例によって大騒ぎをひき起こす。教授の授業に口出しし、学生の前で珍説を展開してみせるのだ。そんな寅次郎はすっかり人気者になり、教授もシャッポをぬぐほどだ。

そんなやり取りを経たあとに、入院していた老婆が死ぬ。死に際に会いたいと言われた寅次郎は、姪の世話で車に乗って駆けつけるが、間に合うことはできなかった。老婆はかねがね、自宅で死にたいと言っていた。その願いをかなえてやれなかった女医は、これでよかったのかと思い悩む。だが、病院の上司に、ふらついている気分を強く批判され、医師としての自覚を一層深くする。一方寅次郎は、柴又に戻ることはせず、そのまま旅に出る、といった内容だ。

見どころは、寅二郎の恋よりも、俵万智の短歌が要所要所で披露されるところではないか。「サラダ記念日」が出版されたのは、前年の1987年で、大変なブームを巻き起こしていた。この映画は、そのブームにあやかったということだろう。


HOME日本映画山田洋次男はつらいよ次へ








作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2013-2021
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである