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男はつらいよぼくの伯父さん:寅さんシリーズ第四十二作



「男はつらいよぼくの伯父さん」は、寅さんシリーズ第四十二作、公開は1889年。成長して予備校に通う甥の満男の恋を描く。その恋を寅次郎が応援するというような内容だ。そんなわけで、この作品の主役は甥の満男と、その恋人を演じる高校生泉(後藤久美子)だ。寅さんシリーズで寅次郎が脇役に回るのは初めてのことだ。

満男は、柴又の高校に通っていた頃、下級生の泉に関心をもっていた。卒業後その泉から手紙が来る。泉は名古屋に転向して母親と一緒に住んでいるのだが、友達もいないし、寂しいという。そこで満男はバイクに乗って名古屋をめざす。途中トラックに煽られて転倒し、そこを通りがかった中年のオートバイ乗りに助けられるが、その男が同性愛者だったりして、散々な思いをして名古屋についたはいいが、泉はさらに佐賀へと移ったと聞かされる。

満男は佐賀まで足を延ばし、ついに泉の所在を突き止める。とりあえず佐賀の旅館に泊まったところ、そこで偶然寅次郎と相部屋になる。寅次郎と満男はそのすぐ前にも会っていて、寅次郎は満男の恋心を聞かされていたのだった。そこで寅次郎は満男の恋をかなえてやろうと思い、最大限の応援をする。二の足を踏んでいる満男を引っ張って、泉の家に赴き、一家の老人からいたく歓待された上に、泊めてもらったりする。満男は泉とのデートを心行くまで楽しむ、というような内容だ。

満男と泉の恋はまだ幼い。そこを一家の主人から批判される。まだ未成年の女子が男と歩き回りいらぬ噂を立てられたら、保護者としての面目がたたない。そういって主人は寅次郎たちの振舞いを批判するのだが、それに対して寅次郎は、彼一流の理屈で反論する。愛には年齢も噂も関係がないというのだ。そこがこの映画の見どころだろう。寅次郎は寅次郎なりに、独特の倫理観をもっているのである。

この映画の時点で、渥美清は61歳だったが、年以上に更けて見える。笠智衆のほうは85歳になっていて、これはさすがに体の衰えをかくすことができない。

なお、この映画のなかで、同性愛者がかなり戯画的に描かれている。あたかもゲイは嘲笑の対象として、いくらいじってもかまわないという姿勢が伝わってくる。時代の制約があるとはいえ、同性愛に理解のある人が見たら、不愉快になるところだろう。


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