壺齋散人の 映画探検 |
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「寅次郎の休日」は寅さんシリーズ第四十三作、公開は1990年暮。大学に入った満男と泉ちゃんの幼い恋、その泉ちゃんの母親と寅次郎のゆきずりの触れ合いがテーマである。この二つの出来事が並行して語られる。満男の出番が非常に多くて、寅次郎はわき役になりがちだが、まだしっかり存在感を発揮している。 満男は柴又の家から八王子の大学に通っているが、通学に時間がかかるし、自立したい気持ちもあるので、大学の近くに下宿したいといって親を困らせる。そんな折に泉ちゃんが訪ねて来る。泉ちゃんは、両親が離別したあと、母親と一緒に名古屋に引っ越したのだったが、なんとか両親に撚りをもどしてほしいと思っている。そこで父親を説得しにきたというので、満男は一緒に付き添って、父親が働いているという工場に行く。ところが父親は工場をやめ、九州の日田に移ったというのだ。 泉ちゃんは九州まで父親を追いかけていく決意をする。満男もその決意に気おされて一緒に日田までついていくのだ。かれらは、日田の町でひっそりと暮らしている父親と、その新しい伴侶と面会するのだが、父親が幸せそうにしているのを見て、そのまま引き下がる。 一方、娘の様子が気になった母親は、柴又までやってくる。そこへたまたま居合わせた寅さんと気が合い、二人は一緒に日田まで出かけていく。そこで、満男と泉ちゃん、寅さんと泉ちゃんの母親、計四人がばったりと顔を合わせる、というような内容である。 結局、泉ちゃんへの満男の思いは中途半端に終わり、寅次郎のほうも例によって失恋する。泉ちゃんの母親は、いまだに亭主のことが忘れられず、寅次郎の思いに向き合う心の余裕はなかったのだ。 親たちがまだ満男を子ども扱いするのに対して、寅次郎が満男を一人前の人間として扱ってやろうとするところが見どころだろう。寅次郎自身、まだ十代のうちに、かれなりに自立したからだった。 |
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