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男はつらいよ寅次郎の告白:寅さんシリーズ第四十四作



「男はつらいよ寅次郎の告白」は寅さんシリーズ第四十四作、公開は1991年暮。泉ちゃんの家出と、それを心配する満男の行動がメーンになり、寅次郎はそんな若い二人を見守る役に徹する。寅次郎が前作同様脇にまわるようになったのは、渥美清の体調がよくなかったせいだとされている。一方大学生になった満男は、十分青春のヒーローたりうるまで成長した。

泉ちゃんは、高校卒業後東京の会社に就職したいと思い、学校の招待状を持って東京に出てくる。しかし銀座にあるその会社に行ったところ、体よく断られてしまう。泉ちゃんは失意を抱いて名古屋に帰り、そこで母親と衝突する。自分が将来のことで悩んでいるのに、母親は恋人を作り、あまつさえ勝手に家に連れて来るのだ。そんな母親に反発した泉ちゃんは、家出をして鳥取にむかう。そこで泉ちゃんは偶然寅さんと出会い、思わず抱きついて涙を流すのだ。

二人は、親切なお婆さんの家に泊めてもらう。このお婆さんは善意の塊のような人で、寅さんたちを快くもてなし、手三味線で喉を披露してもくれる。感激した寅さんたちは、そのお婆さんとともに、一つの部屋に布団を並べて寝るのだ。

一方、泉ちゃんが家出して鳥取にいることを知った満男は、急ぎ新幹線に乗って鳥取に向かう。そして鳥取砂丘の中で会うことができるのだ。寅さんは鳥取で料亭を開いている女友達のやっかいになる。その女友達は、むかし寅次郎とねんごろだったころがあり、なつかしさから寅次郎たちをもてなしてくれるのだ。

さまざまな出来事があったのち、泉ちゃんは母親の気持ちを理解できるようになる。家に帰った泉ちゃんは、母親に好きなようにしていいというのだ。

こんなわけで、この作品は泉ちゃんを中心にしており、寅次郎は脇役に徹している。そんなこともあって、この作品では寅次郎の恋は前景化しない。寅次郎は昔の女友達と、あくまでも友達として付き合っているだけなのだ。

泉ちゃんが就職したいと思った会社とは、銀座の山野楽器店で、その店の内部の様子も映し出される。そこの支配人のような男が泉ちゃんを近くの喫茶店に連れて行って、君を採用するわけにはいかないと言い渡す。その様があまりにも薄情に見えるので、観客は山野楽器店に反感を覚えるのではないかと、心配になるくらいだ。

映画の始めのほうで、例によって寅さんとタコ親爺との壮絶な喧嘩が映される。彼らの喧嘩はいつものことだが、この時ばかりは尋常でない険悪な雰囲気を感じさせた。


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