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男はつらいよ寅次郎の青春:寅さんシリーズ第四十五作



「男はつらいよ寅次郎の青春」は、寅さんシリーズ第四十五作、公開は1992年暮。旅先の宮崎で出会った中年女との切ない恋を描く。それにさくらの息子満男の恋をからませる。好きで仕方がない泉ちゃんになかなか恋心を打ち明けられない満男に、寅次郎が励ますところが見せ所だ。煮え切れない満男に向かって寅次郎はこういうのだ。愛していると思っているだけで何もしないのは、愛していないのと同じことだ、愛は態度で示せ、と。これは、満男への忠告であるとともに、寅次郎自身の自戒の言葉とも受け取れる。

舞台は宮崎の油津。寅次郎がたまたま立ち寄った喫茶店に、風吹じゅん演じる中年女が入ってきて、男が欲しいとため息をつく。それを聞いた寅次郎が冷やかしたことがきっかけで二人は仲良くなる。寅次郎は、中年女がやっている理髪店に連れていかれて、散髪をしてもらった上に、彼女の家に泊めてもらう。彼女は、船乗りの弟と二人で暮らしていたのだった。

一方、甥の満男のほうは、泉ちゃんと仲良くしている。そんな満男を、さくらはじめ周囲のものは暖かく見守っている。泉ちゃんは満男の家に泊まるほど、打ち解けた関係にあるのだ。彼女は友達の結婚式に呼ばれて宮崎に行く。そこで偶然寅二郎と再会するというわけだ。

寅次郎が泉ちゃんと再会したのは、風吹と二人で散歩している途中だった。そのさいに寅次郎は粗忽な動作が災いして左足を痛めてしまう。入院騒ぎにまで発展したので、泉ちゃんは柴又に電話を入れ、寅次郎の様子を伝える。それを聞いた満男は、父親から金をせびって宮崎に向かうのだ。泉ちゃんに会いたい一心で。

こうして、寅次郎と中年女、満男と泉ちゃんという二組のカップルの夢のような交際が進んでいく。だが、寅次郎は、風吹が止めるのを振り切って、満男たちと一緒に柴又に帰ることにする。風吹はがっかりする。その段階で寅次郎の恋は終わりを告げたわけだ。

一方、満男と泉ちゃんは、なんのかのと言って交際を続ける。そのうち泉ちゃんは、名古屋の母親から帰ってきてほしいと願われ、そのとおりにする。このままでは永久に離れ離れになるのではないかと恐れた満男は、新幹線が発射間際の東京駅にかけつけ、そこで泉ちゃんに恋心をあかす。感動した泉ちゃんは、満男に接吻し、二人は互いの愛を、行動で示すにいたった、というような内容である。そのラストの場面で、寅次郎の満男への忠告が身を結んだというわけである。一方寅次郎自身は、あいもかわらず本物の恋とは縁がない。その寅次郎が、下呂温泉で、新婚旅行に来ていた風吹の弟とあう。弟は寅次郎にこういう。姉はその後すぐにある男と結婚しました。自分としては、姉は寅さんと結婚するものとばかり思っていたので、意外でしたというのだ。それを聞いた寅次郎は絶句するのである。


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