壺齋散人の 映画探検
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チェコ映画「アリス」:アリスの不思議な世界



1988年のチェコ映画「アリス」は、ルイス・キャロルの有名なファンタジーを映画化した作品。実写と人形劇を組み合わせて、ファンタスティックな雰囲気を盛り立てている。監督のヤン・シュヴァンクマイエルは人形劇を得意としているそうで、その人形劇の雰囲気を生かすことで、原作のファンタスティックな雰囲気をより一層盛り立てている。チェコという国は、昔から人形劇が盛んな国柄なので、こういう映画はチェコならではという感じを抱かせる。

原作の中からいくつかのシーンを取り出してつなぎ合わせるという構成を取っている。原作では、アリスはウサギに導かれるようにして異次元の世界へワープし、その世界で様々な体験をする。その体験の数々が、いずれもファンタスティックな出来事というわけだ。この映画では、アリスはやはりウサギに導かれて異次元の世界へワープするのだが、なぜかその世界は、現実の世界の延長のように見え、そこに行くのは、地面の穴ではなく、机の引き出しからなのだ。引き出しから異次元に入ったアリスは、ビルディングの中を下降して、その底ある別世界にたどりつき、そこで色々な体験をするのである。

原作同様、洪水に見舞われるところから始まる。洪水に直面したアリスは、大きくなったり小さくなったりするのだが、人間のサイズをはみ出たところで、人形にかわる。並の人間のサイズでいる間は、実写のままで、彼女の相手をするものだけが人形である。その後も、アリスは非現実的な事態に巻き込まれるたびに、人形に変身する。最大の見せ場は、ピッグとペッパーの場面で、それにトランプの女王の話が続く。原作で大きな比重をしめるチェシャ猫は出てこない。

映画の最後に、異次元の世界でアリスが出会った生きものたちが、すべてアリスが実際にもっているおもちゃだということが判明する。アリスは異次元で自分のおもちゃたちに出会ったというわけである。その辺のまとめ方は、子どもを意識したものだろう。




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