壺齋散人の 映画探検
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アニメ映画「ファンタスティック・プラネット」 架空の惑星の人類



1973年のアニメ映画「ファンタスティック・プラネット」は、一応フランス・チェコスロヴァキア合作ということになっているが、監督のルネ・ラルーはフランス人だし、制作もフランス資金で行われたので、実質的にはフランス映画といってよい。ただ、チェコのお家芸であるシュル・レアルな人形劇の雰囲気を感じさせる。

架空の惑星での話である。その惑星にはドラーグという巨人族が支配者として住んでおり、そのほか地球の人間を思わせるオム族が住んでいる。オム族はドラーグに抑圧され、ときには虐殺の対象ともなる。そのへんは、「猿の惑星」における人間の境遇に似ている。「猿の惑星」が映画化されたのは1968年のことだから、それを強く意識していることはありうる。

ドラーグ族の子供に母親を殺されたオム族の子供テールが、ドラーグ族の少女ティパのペットにされるところから始まる。ドラーグ族とオム族とでは時間の流れがことなり、ドラーグ族の一週間がオム族の一年に相当する。だから、テールはティパより早く成長する。ティパがまだ子供なのに、テールは一人前の青年になるのだ。成長したテールは、オム族の人々に合流し、ドラーグ族からの独立をめざす。そんなオム族を脅威に感じたドラーグ族は、オム族の殲滅作戦をたてる。だがオム族は簡単には屈しない。

オム族の高い知性を知ったドラーグ族は、戦いではなく、平和共存をはかる。かくして両者のすみわけが成立する。オム族は、他の惑星に移住し、そこで繁栄する道を選ぶのだ。

オム族という言葉がフランス語で人間を意味し、テールという言葉が地球を意味することからすれば、この映画が、人類の運命をテーマにしたものと考えるには相当の根拠がある。




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