壺齋散人の 映画探検
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キャロル・リードの映画:主要作品の解説と批評


キャロル・リードは、デヴィッド・リーンと並んで戦後のイギリス映画を代表する監督である。イギリス映画といえば、国民性ともいえる推理小説趣味を体現したミステリー映画に持ち味がある。キャロル・リードの代表作となった「第三の男」は、まさにそうしたイギリス趣味が前面に出た映画であって、そうした意味で、かれはもっともイギリス人らしい映画監督だといえる。

一方、ライバルと目されたデヴィッド・リーンは、イギリス人には珍しい熟年男女の恋愛をテーマにした映画「逢引き」を作っており、小生はそれを、世界映画史上でも特筆すべき恋愛映画だと思っている。

このように二人は、対照的な作風を示しているが、ともにイギリス映画の黄金時代を作った仲間というべきだった。

キャロル・リードの名を最初に知らしめたのは、アイルランド紛争をテーマにした「邪魔者は殺せ」だった。もっともこれは、アイルランド問題を正面から取り上げたものではなく、アイルランド人が主人公の殺人劇だった。しかし、後にリードは「二つの世界の男」で、冷戦によって分断したヨーロッパ社会を描いてもおり、それなりの社会性を感じさせたりもした。

晩年は商業性の強い作品を手がけるようになった。イギリス人の好きな作家チャールズ・ディケンズの小説「オリヴァー・ツイスト」を、デヴィッド・リーンが1948年に映画化していたが、キャロル・リードも対抗するように、同じテーマの映画を1968年につくった。しかし二番煎じでは能がないと考えたか、ミュージカル仕立てにして、筋書きもかなり変えた。ディケンズの原作にはユダヤ人への偏見が見られたが、かれのミュージカル映画には、そうした偏見は一切見られない。

1972年の映画「フォロー・ミー」は、リードにとって最後の作品となったものだが、ミア・ファーローの魅力を最大限に引き出して、しゃれた映画に仕上げてある。

こんな具合にキャロル・リードはけっこう幅広い分野の映画を手がけたといえる。ここではそんなキャロル・リードの主要な作品をとりあげ、鑑賞しながら適宜解説・批評を加えたい。


キャロル・リード「邪魔者は殺せ」:アイルランド紛争の一こま

キャロル・リード「落ちた偶像」 少年の勘違い

キャロル・リード「第三の男」:映画史上に残る傑作

キャロル・リード「二つの世界の男」 冷戦下のベルリン

キャロル・リード「空中ブランコ」 男女の繊細な三角関係

キャロル・リード「華麗なる激情」:ミケランジェロの半生

キャロル・リード「オリバー」:ディケンズ作品のミュージカル化

キャロル・リード「フォロー・ミー」:大人の洒落た恋愛



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