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キャロル・リード「二つの世界の男」 冷戦下のベルリン



キャロル・リードの1953年の映画「二つの世界の男(The Man Between)」は、第二次大戦後の東西冷戦の一こまを描いた作品。戦後ベルリンは東西に分断されたが、まだベルリンの壁ができていない時代に、東西を自在に行き来しながら、東側のスパイとして働く男の屈折した生き方を描いている。

当時は、東側から西側に越境するドイツ人が多数いたようで、その流出を止めるために壁が建設されたという見方もあるが、その壁がない時代には、東側から西側への越境は比較的容易だった。その越境を妨害するために、東側ではさまざまな工夫をこらした。この映画の主人公は、そうした東側の意向に沿ってスパイ活動をしていたのである。

だが、かれは東側の社会主義体制に満足してたわけではなく、かえって不満を持っていた。彼の妻は、そんなかれを置き去りにして、西側に去ったのだった。しかもそこで、別の男と結婚していた。映画はその別の男マーティンの妹スザンヌと主人公のスパイ、イーヴォの関係を中心に展開していくのである。

映画の見どころは、イーヴォが東側から西側へ越境するシーンだ。かれはスザンヌに東ベルリンを案内していたのだが、仕事上のことから官憲に追われる立場になり、スザンヌを伴って西側へ逃れようとする。しかし越境はうまくいかず、スザンヌだけが西側へ脱出し、イーヴォは東側に取り残される、といったような内容である。

要所で少年を登場させて、イーヴォ、イーヴォの妻、そしてスザンヌとの間のインフォメーションを仲介させたり、戦後復興がすんでおらず、廃墟となったベルリンの街を写したりと、いろいろな工夫がある。とくにベルリンの廃墟の様子は、歴史を強く感じさせる。




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