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ドイツ映画「制服の処女」:女子寄宿学校を舞台とした青春映画



1931年のドイツ映画「制服の処女(Mädchen in Uniform レオンティーネ・ザガン監督)」は、女子寄宿学校を舞台とした青春映画である。ドイツでもヒットしたそうだが、日本ではそれ以上にヒットしたという。タイトルに日本人好みの「処女」という言葉が入っていたせいもある。原題は単に「制服の少女」と訳すべきものなのだが、日本人は結婚前の若い女を見ると、誰彼かまわず「処女」と呼ぶ癖があった。その処女、しかもドイツの処女が描かれているとあって、当時あまり外国の事情に明るくなかった日本の庶民たちも、好奇心をそそられたのであろう。

五十人の少女たちを収容している寄宿学校が舞台である。ヨーロッパの寄宿学校は、キリスト教団体の運営するものが多いと聞くが、この映画に出てくる寄宿学校は、軍の関係者が運営している。だから、軍人の妻として相応しいのみならず、優秀な軍人の母親たるべき資質を養うことを目的としている。要するに規律第一の学校なのだ。そこがやたら規律好きの日本人に受けたのだろう。

母親のいない十四歳の少女が、寄宿学校に入れられて、そこの雰囲気に溶け込んでいく過程を描いている。少女たち同士のさまざまな触れあいを描くところがこの映画の主な内容であるが、ハイライト部分として、主人公の少女が一人の女教師にあこがれるさまがクローズアップされる。これは、大人の女に母親のイメージを求めたのだと考えられるのであるが、映画の中の学校当局は同性愛と曲解して迫害にかかる。そのあげく、絶望した少女が自殺を図る、といった内容である。

女子寄宿学校が舞台とあって、女性だけが出てくる。男は一人も出てこない。こういう徹底ぶりも、当時の日本人には新鮮にうつったようである。




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