壺齋散人の 映画探検 |
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アルゼンチンは、メキシコとともに中南米のスペイン語圏を代表する国家であり、映画つくりもそれなりにさかんだったようだ。政情が安定せず、ペロニスタ系の左派政権と軍事系の右派政権が交代を重ねた。政情が不安定になると、映画産業も影響を受けて沈滞した。アルゼンチンの政情が比較的安定し、文化的にも発信力を高めるようになるのは、21世紀にはいってからのことだ。 近年のアルゼンチン映画には、アルゼンチン社会の矛盾に正面から向き合ったものがある。2008年の作品「ルイーサ」は、失業してホームレスの境遇に陥った老女が、地下鉄で乞食をするさまを描いており、2009年の「瞳は静かに」は、一少年の目を通じてみたアルゼンチン社会の腐敗を描いた。同2009年の「瞳の奥の秘密」は、アルゼンチンの司法の腐敗をテーマにしたものである。これは国際的な注目を集めた。 2016年の作品「笑う故郷」は、成功した文学者の里帰りを描いたもので、アルゼンチン流の人情劇である。2107年の「家へ帰ろう」は、ホロコーストを生き延びた男が、かつてポーランドで世話になった人物を訪ねていくというもので、ユダヤ人が多く暮らすアルゼンチンらしい映画である。また、2022年の作品「アルゼンチン1985」は、軍事政権時代の汚職を追求した映画である。 いずれもかなり強い社会批判意識を感じさせる作品である。アルゼンチンはユダヤ人が多く暮らすといったが、ボルヘスをはじめユダヤ系の作家・芸術家を多く出している。 アルゼンチン映画を見ていて気になるのは、インディオと呼ばれる先住民が一切出てこないということである。いないはずはないのだが、取り上げるにあたいしないと判断したのでもあろうか。ボルヘスなどの文学でも、先住民は出てこない。そこはマルケスの「百年の孤独」を生んだコロンビアとは違う。 ここではそんなアルゼンチン映画の代表作を取り上げ、鑑賞しながら適宜解説・批評を加えたい。 アルゼンチン映画「ルイーサ」:地下鉄を舞台にした弱者の仕事ぶり アルゼンチン映画「瞳は静かに」:少年の見た社会と人間関係 アルゼンチン映画「瞳の奥の秘密」 正義の自力での実現 笑う故郷:アルゼンチン流人情劇 アルゼンチン映画「家へ帰ろう」 ユダヤ人のホロコーストの記憶 アルゼンチン映画「アルゼンチン1985」 軍事独裁政権の指導者に対する裁判 |
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