壺齋散人の 映画探検
HOMEブログ本館美術批評東京を描く水彩画動物写真西洋哲学 プロフィール掲示板



小説吉田学校 戦後日本の保守政治家たち



1983年の日本映画「小説吉田学校 森谷司郎監督」は、吉田茂を中心とした戦後保守政治家たちの権力闘争を描いた作品。一応吉田の政治姿勢に焦点をあててはいるが、かれの政敵たちにもかなりの気をくばり、両者の権力争いというふうに設定している。吉田の政敵の中では、三木武吉がもっとも存在感がある。三木は河野一郎をかついで吉田と対立し、ついには念願の河野内閣を実現させる。映画は、河野内閣が成立するところまで描く。

吉田を日本独立の英雄のように描いているのは、高度成長をとげて一流国家の仲間入りを果たした当時の日本の雰囲気を反映したものだろう。そんなわけでこの映画は、あまりしまりがない。テレビドラマのような作品である。なにしろ、戦後の保守政治家の主要な人物がオンパレードで出てきており、その中には同時代の自民党を牛耳っていたものも含まれているので、観客としては、ゴシップ感覚で見たのではないか。

一番迫力があるのは、若山富三郎演じる三木武吉である。三木は義理人情を重んじる古いタイプの政治家として描かれている。それに対して森繁久彌演じる吉田茂は、冷徹な現実主義者として描かれる。小生などは、三木のほうに親近感を抱いた。これは余事だが、小生は三木の甥に部下として仕えたことがあるが、どんな人にも気を配る非常に腰の低い人だった。その生き方は叔父の武吉に学んでいたのかもしれない。

なお、吉田が主導した講和問題に、時の天皇が深くかかわったことは、いまでは周知の史実とされているが、それについては、この映画は一切触れていない。




HOME日本映画日本映画補遺









作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2013-2021
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである