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ディーパンの闘い:スリランカ難民を描く



2015年の映画「ディーパンの闘い(Dheepan)」は、スリランカの内戦で難民となってフランスにやってきた人々を描いた作品。フランス人監督ジャック・オーディアールが作ったフランス映画だが、主演俳優はスリランカのタミル人で、かれらが話す言葉もタミル語である。

スリランカ内戦というのは、スリランカ政府とタミル人武装勢力とが戦ったもので、1983年から2009年まで続いた。この映画は、内戦が収束して数年以内に作られたものである。内戦が起きた原因は、スリランカの民族問題の複雑さにある。スリランカは人口の七割を占めるシンハラ族と、二割弱のタミル族とから主になるが、少数派のタミル族が、多数派のシンハラ族が主体の政府に対抗したことから内戦になった。その背景には、イギリスによる植民地支配の負の歴史があった。イギリスは、少数派のタミル族を使って統治したのだったが、独立後にはシンハラ族が実権を握りタミル族は抑圧されるようになった。そこから内戦の芽が育ったわけである。

それゆえ、スリランカ内戦をめぐる諸問題の責任はイギリスが負うべきなのだが、この映画ではなぜか、フランスが尻拭いをしている。フランスは、スリランカ内戦による難民を、政治難民として受け入れているのである。

映画の主人公は、内戦によってそれぞれ家族を失いひとりぼっちになった三人の男女。男性ディーパンと女性ヤリニ、少女イラヤルである。かれらは家族を装ってフランスに難民申請する。フランス政府はそれを受け入れる。NGOによって仕事を与えられたかれらはフランス社会に溶け込んで生きようとする。仕事とは、公営住宅らしいアパート群の管理人である。ディーパンはその管理人の仕事に真面目に取り組み、すこしでも早く生活基盤を確立したいと思う。一方ヤリニは、家政婦の仕事を得るが、フランスに長くいることは考えておらず、イギリスにいる親戚を頼って再移住したいと考えている。そんな二人は、生活の将来プランをめぐって対立したりもするのだが、やがて愛し合うようになるであろう。

二人のまわりには、麻薬の取引をめぐって犯罪者集団らしいものの影が暗躍している。そのうちに、犯罪者同士の対立抗争に二人とも巻き込まれる。その結果、ディーパンは犯罪者集団に立ち向かい、かれらを周囲から駆逐するのである。かくして身の安全を得た三人は、本物の家族として生きていくことを決意する。またディーパンとヤリニの間には新たな家族成員も生まれるのである。

こんな具合に、難民問題に犯罪映画の要素を加味したような作品である。なぜ犯罪をからませたのか、そこには必然的な理由はないように思えるので、別の描き方もあったのではないかと思わせるところもある。




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