モーリス・ピアラの1987年の映画「悪魔の陽の下に(Sous le soleil de Satan)」は、非常にわかりにくい映画だが、カンヌでの評判はよかった。筋がファウスト伝説を踏まえており、カトリックの聖職者の信仰の揺らぎをテーマにしていたからだろう。日本では、坊さんの信仰の揺らぎは笑い話の種にもならないが、カトリックの国フランスでは、深刻な事柄らしい。
自分の信仰に深刻な疑念をいだいた神父が、信仰の確立と聖職者としての能力の獲得を願う。そんな神父を、人間に化けた悪魔が誘惑する。神父は悪魔のおかげで聖職者としての能力を身に着ける。それにともなって、悪魔に自分を売った罰を、関係のない女性が引き受け、また、悪魔から授かった能力で、死んだ子供を生き返らせる奇跡を起こす、といったような内容だ。
映画はいくつかのサブストーリーからなっている。若い女がふしだらな行動をしたあげくに、ある男を殺してしまうこと、その女性が罪の意識におののいて自殺すること。次に羊飼いに化けた男が神父を誘惑すること。その誘惑の仕方が振るっていて、悪魔は神父に性的な関係を迫るのである。三つめは、死んだ子供を神父が生き返らせること。その奇跡を通じて神父は人々の帰依を絶対的なものにするのである。
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