壺齋散人の 映画探検
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フランス映画「エマニエル夫人」 日本女性が好んだポルノ



1974年のフランス映画「エマニエル夫人」は、世界中で反響を呼んだが、特に日本での反響が大きかった。ポルノ映画ながら、普通の映画館で上映されたことで、人気に火が付いたようだ。男がこうしたポルノを愛玩するのは世界中どの国でも同じだが、日本では、若い女性の人気を集めたという。なぜ、若い女がポルノにしびれるのか。小生のような老人にはわからない。

フランス映画らしく、エロチシズムに充ち溢れているとともに、人種的な偏見にも満ちている。この映画はタイのバンコクを舞台としているのだが、タイ人はみな猿のような生きものとして描かれている。男はパンツをはいた猿だし、女は股の間の穴からたばこの煙を吐く淫乱なメス猿として描かれているのだ。一方、バンコクのフランス人社会は、文明人のオアシスとして描かれる。そのオアシスを舞台に、好色なフランス人男女が、性的遊戯を満喫するというような内容だ。じつにいやらしい映画といってよい。こんな映画に、日本人の若い女性が夢中になったということは、日本人独特の人種コンプレックスが働いたためか。

エマニエル夫人は主人公のフランス女の名だ。パリで一人暮らしをしていた彼女は、バンコクで仕事をしている夫を追って来たのだったが、バンコクへ向かう飛行機の中で、俄かに欲情を催し、付近の男を誘惑して、座席の上でセックスする。それのみでは足りず、別の男とトイレの中で立ちセックスをする。わずか十七時間の飛行の合間までも淫欲をおさえられず、ところかまわず男を迎え入れるというのは、いくら好色なフランス女でも、ひどすぎるのではないか。

エマニエルは、バンコクでも欲望のままに生きる。胸もでていないような少女にそそのかされて、寝椅子の上でマスターベーションをしたり、成熟した女に欲情を感じたり、といった具合だ。そんな妻を夫は、どういうつもりか、他の男にあずけて淫乱な遊びをさせてやる。女は両手を床についた姿勢で、タイ人の男に尻をさしだし、背後からせめてもらうのだ。こういう体位をフランス人はドッグスタイルといっているそうだが、フランス人以外の人種は、フレンチスタイルと呼んでいる。

そんなわけでこの映画は、ふつうの商業映画の外観をまとっているが、すこし手の込んだポルノ映画である。日本ではこの映画の商業上映に反対する声も強かったそうだ。




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