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ベルナルド・ベルトルッチ「孤独な天使たち」:自閉症気味の少年と麻薬中毒の姉



ベルナルド・ベルトルッチの2012年の映画「孤独な天使たち」は、自閉症気味の少年と、その腹違いの姉で麻薬中毒の娘との、奇妙な共同生活を描いた作品だ。少年が自閉症気味というのは、母親や祖母など親密な人物とはコミュニケーションがとれているが、学校での対人関係を形成できないでいるという意味だ。学校では、スキー旅行が計画されているが、少年はそれに参加したくない。そこで参加費として母親からもらった金で、当分の食料を買い込み、自宅マンションの地下にある倉庫に閉じこもる。そこで学校が休みの間、一人暮らしをするつもりなのだ。

そんなかれの所に、腹違いの姉がやって来る。少年の家に入れてもらおうと思ったが、少年の母親が入れてくれない。ほかに行くところもないから、この倉庫で暮らすしかない。だから一緒に入れてくれというのだ。この娘は、少年とは腹違いの姉。少年の父親が彼女の母親に生ませた子だが、父親は身分の低い彼女ら母子を見捨てた。それは少年の母親が、父親を奪ったからだと彼女は言っている。

ともあれ、少年は彼女を倉庫に入れ、一緒に暮らし始める。少年は、腹違いとはいえ、この娘を姉だと認めており、それなりに親密な感情を向ける。一方娘のほうは、麻薬が切れて禁断症状があらわれたり、また、全く無一文でこの先どうしていいのかわからなったりして、かなり精神不安定な状態だ。売春まがいのこともやっているらしく、少年が留守の間に中年の男を引き入れたりもする。そんな姉を少年は、何とか立ち直らせたいと思う。

そんな具合で、これは思春期にある少年と、その姉との間で繰り広げられる、それなりに親密な姉弟の関係をテーマにしたものだ。こういうタイプの人間関係は、あまり見かけないものなので、観客の中には珍しいものでも見るように見たものもいるだろう。姉弟の関係であるから、性的なイメージは一切出てこない。いまどき珍しいタイプの映画である。



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