壺齋散人の 映画探検
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日本暴力列島 京阪神殺しの軍団:山下耕二



山下耕二は東映やくざ映画を代表する監督で、「山口組三代目」など実録物を多く作った。1975年の作品「日本暴力列島京阪神殺しの軍団」は、彼の代表作だ。映画の冒頭でフィクションと断っているが、それは方便で、実際には山口組の全国制覇の一幕を描いている。この映画には、日活の人気俳優だった小林明が、主演のやくざとして出演して話題となった。

その小林が演じるやくざは、在日コリアンだ。それがこの映画を特徴づけているといってもよい。もっとも、在日同士の絆の深さは描かれているものの、あまり掘り下げた表現はない。あばれもののやくざが、たまたま在日コリアンだったというくらいのものである。

この映画の材料となったのは、山口組のなかで殺しの軍団といわれていた柳川組で、映画では平木組となっている。その平木組のかかわった抗争事件が、次々と描かれていく。小林明演じる平木というやくざは、命知らずの男で、彼の配下のやくざたちも、命を投げ出して戦う。そんな狂暴な連中を、山口組では重宝して、全国制覇の闘いの最前線に立てたわけだ。

しかし平木は、自分がただ利用されていることをさとると、最後には一人で巨大な力に立ち向かう。そこに彼の男としての意地が感じられるのだが、それは民族特性とはかかわりがないような描かれ方をされている。

やくざ映画にも女の匂いは必要とばかり、小林明演じる平木は女に惚れたりもする。しかしウェットな関係には至らない。女はやはり、抗争の現場には相応しくないし、女に入れあげていては、過酷な抗争を生き抜けない。

やくざ映画であるから当然のことであるが、暴力シーンが多いし、また凄惨な描き方をされている。至近距離から拳銃をぶっぱなすのはそう驚かされるものではなく、短刀で刺したり、棍棒でぶちのめしたり、日本刀でぶった斬るシーンがすさまじい迫力を以て迫って来る。「仁義なき戦いシリーズ」の暴力シーンにまさるとも劣らない迫力である。

小林明演じる平木が、死んだ配下の遺骨をおさめた壺を、列車の窓から投げるシーンが出て来る。その際に平木は、「わいらに墓はないもんな」という。その表情にはしかし、ウェットなところが感じられる。小林明という俳優は、基本的にはウェットに出来ていて、ドライな悪人の役はあまり似合わないようだ。もっとも小林のそんなウェットなところが、この映画の魅力ともなっている。




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