壺齋散人の 映画探検
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オタール・イオセリアーニ「月曜日に乾杯!」:グルジア的なフランス



2002年の映画「月曜日に乾杯!(Lundi matin)」は、グルジア人であるオタール・イオセリアーニがフランスで作った作品である。プロデューサーはフランス人たちであり、主演俳優もフランス人だが、映画そのものの雰囲気はあまりフランス的ではない。なんとなく東方の雰囲気を感じさせる。それには俳優の一部にグルジア人が加わっていたり、バックミュージックに東方的な雰囲気があるからかもしれない。

舞台はフランスの片田舎。主人公が通う工場地帯の外観からして、おそらく北部の工業地帯ではないか。その工業地帯の郊外の農村が主要な舞台なのだが、その農村にもフランス的なものより、グルジア的なものが込められているようである。そういう点では、イオセリアーニは、故郷のグルジアにかなりこだわりをもっているのだろう。

その農村に暮す一家と、その隣人たちが映画の主な登場人物である。これといったストーリーはない。農村の生活風景が淡々と描かれるばかりである。ただ、映画の後半で、主人公のヴァンサンが旅するシーンが挟まれる。とりわけヴェネツィアである。ヴァンサンはそこで、自分の生みの父親と会う。父親はそれなりの財産をもっているようだが、それを息子にゆずる気持はなさそうだ。息子は、たまたま知り合った現地の男と意気投合し、ヴェネツィアにいるあいだは、その男と行動をともにする。かれは有り金をごっそりすりに取られる災難にあうのだが、そんなことにはめげないで、旅を楽しむのである。

ヴァンサンが旅したわけは、工場での単純労働に嫌気がさしたのと、家族から疎外されていると感じたからだ。息子たちからは無視されるし、妻にも大事にされていない。ときたまセックスを強要されるのがつらい。そんなわけで、育ての父親から小遣いをもらって、旅に出ることにしたのであった。

ヴェネツィアの風景が情緒たっぷりに描かれる。ヴェネツィアといえば、「旅情」や「ベニスに死す」などで、その風景が紹介されたところだが、この映画は、また違った視点からヴェネツィアを紹介している。とりわけ、運河めぐりが印象的だ。運河から直接建物の内部に入るところなどは、まさしく水の都というにふさわしい。



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