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スペイン映画「サルバドールの朝」:フランコ時代の反政府運動



2006年公開のスペイン映画「サルバドールの朝」は、フランコ政権下で起きた反政府運動を描いた作品。実在の人物サルバドール・ブッチ・アンチックの半生をモデルにしている。彼は、警察官殺害の容疑で逮捕され、1974年に鉄環絞首刑という方法で処刑されたのだが、これはロープではなく、鉄の輪を首に巻き付け、それを締め付けることで殺害するという、かなり手荒な方法である。おそらく、見せしめの意図が込められているのだろう。文明国を標榜している国にはふさわしくないというべきである。

サルバドールは、反フランコの無政府主義者の団体に属し、反政府運動をやっている。活動資金は銀行強盗で賄っている。その現場を警察に抑えられ、もみ合っている最中に一人の若い警察官を銃で撃ってしまう。その罪を問われる形で裁判にかけられ、大した証拠が示されないまま、処刑される過程を描いている。

なにしろこの映画を見たのは、かなり以前のことなので、詳細は覚えていない。ただ、いくら反政府運動の活動資金を得るためとはいえ、銀行強盗をするというのはずいぶん乱暴だと思ったものである。また、この事件が、後のスペインの民主化に大きな役割を果たしたとされているが、それにも違和感を覚えたものだ。

この映画に何か見どころがあるとすれば、それはフランコ政権が国民から浮き上がっており、国民を従わせるために、残酷な刑で反乱分子を威嚇しているという歴史的な事情を思い知らせてくれるところだろう。




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