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キャロル・リード「空中ブランコ」 男女の繊細な三角関係



キャロル・リードの1956年の映画「空中ブランコ(Trapeze)」は、ハリウッドで作ったということもあり、かなり通俗的な内容の作品である。ハリウッドにしてはまずらしく、男女の繊細な三角関係がテーマだ。なにごとにも大雑把なアメリカ人が、三角関係に陥った男女の感情の機微を描くというのは、リードとしても冒険だっただろう。だが、サーカスという世界の独特の雰囲気を生かすことで、興行的には成功した。

それには、主演のブランコ乗りを演じたバート・ランカスターの演技が大きく働いた。かれは、若いころサーカスでブランコ乗りをやった経験があり、その経験をいかして、スタントマンをつかわずに空中ブランコの離れ業を演じたというので、大評判になったのだ。

怪我をして第一線から引退したサーカスのブランコ乗りが若い相棒を得て再起を図ろうとするが、そこへ女がからんでかれらの信頼関係にひびが入るというような内容だ。相棒の若い男をトニー・カーティスが、かれらの関係にひびを入れる若い女をジーナ・ロロブリジーダが演じている。彼女は、イタリアのグラマー女優の象徴のような存在で、主にフランスの映画で有名になったものだが、この映画の中でも豊満な肉体美を見せてくれる。

筋書きにはこれといったインパクトはない。ただ空中ブランコのスリリングな演技が観客の目を楽しませてくれる。三人のうち、バート・ランカスターの表情は微細に映し出されるが、ほかのふたりは、スタントマンが代理を務めていることもあって、遠映しにされるだけである。




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