壺齋散人の 映画探検
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キャロル・リード「オリバー」:ディケンズ作品のミュージカル化



キャロル・リードの1968年の映画「オリバー」は、チャールズ・ディケンズの有名な小説「オリヴァー・ツイスト」をミュージカル仕立てに映画化した作品。この小説は、リード終生のライバル、デヴィッド・リーンも映画化しており、リードはそれをかなり意識していたと思える。

ミュージカル仕立てについては、リーンと同じでは能がないという配慮によるものだろう、単にミュージカルにしたというにとどまらない。原作の持つ雰囲気も、ミュージカルにふさわしく陽気で華麗なものへと変えてある。

原作は、かなり陰湿な雰囲気をただよわせており、リーンの映画もその雰囲気を受け継いでいた。オリバーが孤児院で虐待されること。ロンドンの町でならず者の集団に加わり、こころならずも悪事をさせられること。そのならず者の集団は、醜悪な顔つきのユダヤ人が支配していることなどである。そういうマイナスの要素を、リードのこの映画は、なるべく毒消しして、陽気で無邪気なものへと変えてある。

最たるものは、ならず者の首領の描き方である。原作とリーンの映画では、この首領は非人間的な無慈悲の権化のように描かれているが、リードはかれにかなり人間的な要素を持たせてある。だから、ならずもの仲間の暮らしは、そんなに陰惨なものではない。

ともあれ、ミュージカル映画らしい陽気で無邪気な雰囲気が横溢している。ミュージカルであるから、すぐれた歌曲も盛り込まれている。「ウンパッパ」などは、子供達にまで人気を博したものだ。




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