壺齋散人の 映画探検
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クリント・イーストウッドの映画:主要作品の解説


クリント・イーストウッドといえば、小生が少年時代に夢中になったテレビの西部劇シリーズ「ローハイド」の印象が強烈だ。若くて純真なカウボーイを演じ、日本の子供たちのアイドルになった。その後、「荒野の用心棒」をはじめとしたイタリア製西部劇、いわゆる「マカロニ・ウェスタン」で人気を取り、ハリウッドでは「ダーティ・ハリー」シリーズで俳優としての名声をほしいままにした。俳優から監督に転身して、大きな成功を収めた人の第一人者といえる。


映画を作るようになったのは、1970年代以降のこと。当初は、「ダーティ・ハリー」シリーズの続編を含め大衆受けをねらった通俗的な映画ばかりつくり、監督としての評価は低かった。やっと監督としての力量が評価されるのは、1988年に作った「バード」によってだ。これは伝説のジャズ・ミュージシャン、チャーリー・パーカーの伝記映画であり、西部劇のイメージが強かったイーストウッドとしては、大いにイメージ・チェンジになった。

監督としてのイーストウッドの名声を決定づけたのは、1992年に作った「許されざる者」である。これもやはり西部劇ではあるが、人間の生き方を考えさせる作品であり、西部劇の形式を借りた人間劇といったほうがよい。だがその後、「マディソン郡の橋」など、あまりぱっとしない映画を再び作るようになった。

監督としてのイーストウッドがコンスタントに傑作を手掛けるようになるのは、21世紀になってからだ。2004年に「ミリオンダラー・ベイビー」でアカデミー賞をとり、2006年には「父親たちの星条旗」及び「硫黄島からの手紙」を作った。この二作は硫黄島の戦いを、ひとつはアメリカ側の視点から、ひとつは日本側の視点から描いたものである。そのため、戦争についての見方に幅を感じさせる。

続いて「チェンジリング」、「グラン・トリノ」、「インビクタス」といった佳作を連発した。それらはいずれも七十歳代半ば以降の作品であって、イーストウッドが、監督としては遅咲きだったということを物語っている。

イーストウッドの作風は、人間の生きざまにこだわるということだろう。彼の映画に出てくる人たちは、道理を重んじ、誠意を大事にする。正義を貫く姿勢を持っているといってよい。そうした姿勢は、正義のために自分の命をかけるような人間を敬愛するところに現れている。イーストウッドは、思想的には保守的といわれるが、その意味は、伝統的な価値観に信頼を抱いているということではないか。

ここではそんなクリント・イーストウッドの主要な作品を取り上げて、解説しながら適宜批評を加えたい。


クリント・イーストウッド「バード」:チャーリー・パーカーの伝記映画

クリント・イーストウッド「許されざる者」:老いたる賞金稼ぎ

クリント・イーストウッド「マディソン郡の橋」:中年男女の不倫の恋

クリント・イーストウッド「ミリオンダラー・ベイビー」:女子ボクサーと尊厳死

父親たちの星条旗(Flags of Our Fathers):クリント・イーストウッド

硫黄島からの手紙(Letters from Iwo Jima):クリント・イーストウッド

クリント・イーストウッド「チェンジリング」:取り換えられた息子

クリント・イーストウッド「グラン・トリノ」:意味のある死

クリント・イーストウッド「インビクタス」:マンデラの人種融和政策




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