壺齋散人の 映画探検
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ノーマン・ジュイソン「夜の大捜査線」: 人種差別をからめた犯罪捜査映画



ノーマン・ジュイソンの1967年の映画「夜の大捜査線(In the Heat of the Night)」は、人種差別をからめた犯罪捜査映画である。人種差別が蔓延していた1960年代のアメリカ南部を舞台に、黒人警察官が白人による差別と闘いながら、高い能力を発揮して、真犯人をあげるというような内容の作品。

その黒人警察官を、シドニー・ポアティエが演じている。ポアティエは、「招かれざる客」で黒人として初めて主役を演じ、一躍時代のスターになっていた。「招かれざる客」では、申し分のないキャリアを背景に、自分を白人に認めさせる黒人を描いていたが、この「夜の大捜査線」においても、能力の高い黒人刑事として、白人たちの人種的偏見を打ち砕き、自分の能力を認めさせる黒人を演じている。この映画が作られた1967年ごろは、公民権運動が高まっており、黒人の権利が主張されていた。そういう時代であったからこそ、このような映画がアメリカ社会にインパクトをもたらしたのであろう。

筋書きは陳腐なものだ。深夜に起きた殺人事件を地元の警察が捜査する。たまたまその町に滞在していた北部の黒人警察官が、疑われて身柄を拘束される。だが彼が警察官だと知って、町の警察署長も多少融和的な態度を見せる。黒人警察官の上司から、犯罪捜査に協力させてもよいという申し入れがあったからだ。

かくしてポアティエ演じる黒人刑事が、犯罪捜査にのめりこんでいく過程を描く。その過程で、白人たちのえげつない偏見に苦しめられ、一時は殺されかけそうにもなるが、高い能力と堅固な忍耐力を発揮して、錯そうした事件を解明するのである。

はじめは黒人に対して強い偏見を示していた地元の警察署長も、付き合っているうちにポアティエに友情を感じるようになる。ロッド・スタイガー演じる白人署長と、ポアティエとの友情が、この映画の最大の見どころといってよい。スタイガーは渋い演技がひかり、ポアティエを出し抜いてアカデミー主演俳優賞を受賞した。ポアティエの演技は、とてもうまいとは言えないので、スタイガーが受賞したのは穏当なことだったと思う。




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