壺齋散人の 映画探検
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シチズンフォー スノーデンの暴露:米政府による国民のプライバシー侵害をあばく



2014年のアメリカ映画「シチズンフォー スノーデンの暴露(Citizenfour ローラ・ポイトラス)」は、アメリカ政府職員で、アメリカ政府による国民のプライバシー侵害を暴露したエドワード・スノーデンの闘いぶりを追ったドキュメンタリー映画である。スノーデン本人のほか、暴露記事を発信したジャーナリスト、グレン・グリーンウィルドが素顔で出てくる。ということは、かれらは最初から世界に向かって自分らの活動を公開する前提でこのドキュメンタリー映画を作ったということになる。だから見方によっては、大向こう受けを狙った自作自演といえなくもない。

ドキュメンタリー映画のうちでも、もっとも徹底した現場密着主義なので、カメラをまわしているのは、スノーデンの身近な協力者である。その協力者は、ローラ・ポイトラスといって、スノーデンのたくらみにグリーンウォルドを巻き込んだ女性ジャーナリストだ。彼女は、当初からスノーデンと深いつながりを持っており、スノーデンとグリーンウィルドとのやりとりのほか、スノーデンと他の様々な人とのかかわりについても、カメラを向けて記録している。そのローラ・ポイトラスがこの映画の制作者であり、監督である。なにしろ現場でカメラを回しているのは彼女なので、すべては彼女によって采配・記録されているわけである。

スノーデンとグリーンウォルドとの数日間にわたる話し合いの様子が記録されている。グリーンウォルドの疑問にスノーデンが答えるという形をとり、その中でスノーデンの意図と、それに対するグリーンウォルドの共感、その結果としての記事の発信、それへのアメリカ政府の反発、といった一連の事態が連続的に継起する。その過程で、アメリカ政府による国民のプライバシー侵害の実態がメディアによって暴露され、オバマ政権の強い怒りを買う。その怒りに身の危険を感じたスノーデンは、安全な国への亡命を図る、というような内容で、とりあえずスノーデンがロシアの空港に到着するところまでを記録している。そのロシアでの滞在許可が出るのは2014年8月1日のことで、その後スノーデンは、今日にいたるまでロシアにとどまりつづけている。

映画の眼目は、アメリカ政府による国民のプライバシー侵害がどれほど深刻なものか、日頃あまり政治的な意識を持たない市民でもよくわかるように作られていることだ。もっとも国民への権利侵害よりは、もっと報道価値の高い事象もある。たとえば外国を対象とした情報収集活動とか、外国の元首に対して通信傍受を行っていたというようなことだ。じっさいドイツのメルケル首相に対して通信傍受をしていたことが明らかにされたときには、外交問題にまで発展し、世界中の耳目を集めたものである。

とにかくこの映画が、アメリカの世論に大きなインパクトを与えたことは間違いないようだ。この映画によって、スノーデンは重要人物の仲間入りし、米政府といえども、おいそれとは扱えない存在となった。




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