壺齋散人の 映画探検 |
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スティーヴン・スピルバーグは、「未知との遭遇」や「E.T.」の印象が強烈なので、SF映画のイメージが定着しているが、それ以外にも幅広い分野の映画をつくっている。「インディ・ジョーンズ」シリーズは冒険娯楽映画だし、「シンドラーのリスト」はナチスのホロコーストをテーマにしたシリアスな社会派映画だし、「プライベート・ライアン」は戦争のおぞましさを描いたものだ。そういう点では、オールラウンドの映画作家だといってよい。 |
スティーヴン・スピルバーグの名を最初に高めたのは1975年の作品「ジョーズ」だ。これは人食いザメと格闘する海の男たちを描いたもので、海洋アクションドラマといったものだ。その分野での先駆的な作品として、いまでも評価が高い。 続く作品「未知との遭遇」は、宇宙の彼方からやって来た宇宙船とそれに乗っていた異星人との交流をテーマにしたもので、SFドラマの一つのパターンの先駆的な作品となったものだ。「E・T」も地球にやって来て、仲間から取り残された異星人と、地球の少年との交流を描いたもので、宇宙人との交流をテーマにしている点では、「未知との遭遇」と似ている。興味深いのは、これらの作品で、スピルバーグが宇宙人を地球にとって敵対的なものとしては描かずに、友好的なものとして描いていることだ。そのへんは、スピルバーグの平和主義的な考えが反映されているのだろう。 考古学者を主人公にした「インディ・ジョーンズ」シリーズは、三作作ったが、どれも大ヒットした。これらの大ヒットを通じて、スピルバーグはヒットメーカーとしての名声を確立した。「ジュラシック・パーク」も「インディ・ジョーンズ」同様の大ヒットを記録したが、この映画は怪獣ブームに便乗したもので、子どもたちばかりでなく、大人からも熱狂的に愛された。 1993年の作品「シンドラーのリスト」は、アウシュヴィッツを舞台にホロコーストをテーマにしたもので、一人のドイツ人が、自分の商売のためだとはいえ、大勢のユダヤ人をホロコーストから救ったことを描いている。これは史実に基づくものだったらしいが、自分も一ユダヤ人として、ユダヤ人を救ってくれたシンドラーという人物に、大いなる尊敬を捧げた映画である。その意味では、一種のプロモーション映画といってよい。 2012年の作品「リンカーン」は、政治家としてのリンカーンよりも、一人の人間としてのリンカーンを描いたもので、リンカーンに対するアメリカ人の敬愛を純粋に盛り込んだような作品だった。 以上の作品を通じて言えることは、スティーヴン・スピルバーグのヒューマニズムといったようなことだろう。そのヒューマニズムは、相手がたとえ異星人でも、同じ生き物として尊敬しあうという姿勢にもあらわれている。こうしたヒューマニズムが、スピルバーグ作品への幅広い支持につながったのではないか。 スティーヴン・スピルバーグ「ジョーズ」:人食いざめと人間の死闘 スティーヴン・スピルバーグ「未知との遭遇」:宇宙人と人間の友情 スティーヴン・スピルバーグ「E.T.」:地球外生物との交流 スティーヴン・スピルバーグ「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」:考古学者の冒険 スティーヴン・スピルバーグ「ジュラシック・パーク」:現代に蘇った恐竜 スティーヴン・スピルバーグ「シンドラーのリスト」:ユダヤ人を救ったドイツ人 スティーヴン・スピルバーグ「プライベート・ライアン」:一兵卒の命を救う スティーヴン・スピルバーグ「リンカーン」:リンカーンの人間性を描く |
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