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キナタイ マニラ・アンダーグラウンド:ブリランテ・メンドーサ



ブリランテ・メンドーサは、「ローサは密告された」で警察の腐敗を描き、鋭い社会的な視線を感じさせたものだ。「キナタイ マニラ・アンダーグラウンド」は2009年の作品で、「ローサ」より七年前に作ったものだが、これもやはり警察の腐敗をテーマにしている。警察はやくざまがいのビジネスをするばかりか、殺人も平然と行う。それを見ると、フィリピンの警察組織がいかに腐敗しているかよくわかる。

警察学校の学生が主人公だ。かれは同窓生に誘われてヤクザの世界に身を入れる。そのヤクザが一人の女を殺す現場に立ち会うハメになる。その現場の緊迫感を、この映画はもっぱら描き出すというわけである。

女は商売のあがりを正直に申告しなかったことで、ヤクザからリンチを受けたということになっている。ヤクザたちはその女を、警察の施設に連れ込み、そこで殺害した上で、死体をバラバラに解体し、それを街中に公然と振りまく。見ていて身の毛のよだつような、陰惨な場面が続く。

そんなわけで、ただひたすら女へのリンチが描かれる。ストーリー性はまったくない。暴力をあからさまに描写することがこの映画の目的といわんばかりだ。その暴力シーンがあまりにも猟奇的だという理由で、フィリピン国内では商業上映ができなかったそうだ。

女を殺すに先立って、警察の隊長格の男がレープする。その上で、命乞いする女の腹をメチャクチャに突き、死んだ女の死体を鉈でバラバラにするのである。ヤクザものたちはそのプロセスを楽しんでいる。なにしろこの連中は、殺した女の死体を脇にしながら、祝杯をあげるのだ。その際に、バロットという卵料理をさかなにする。これはアヒルの受精卵を孵化直前に茹でたもので、「立ち去った女」の中でも出てくる。

加えてヤクザたちは、殺人の愉楽を他人にもわけてやりたいとばかりに、その死体のパーツを街中にばら撒くのである。それが実にショッキングだ。

この映画は、警察の腐敗を告発しながら、人間の残忍性をうかびあがらせようというのだろうか。フィリピン人がなぜこんなに残忍になれるのか。考えさせられる映画である。なお、タイトルの「キナタイ」には、屠殺という意味があるそうだ。人間の女が屠殺されるほか、屠殺された動物の死体も映される。




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