壺齋散人の 映画探検
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韓国映画「新感染ファイナル・エクスプレス」:ゾンビ・ホラー



2016年の韓国映画「新感染ファイナル・エクスプレス」は、ゾンビ・ホラー映画である。それに感染症によるパンデミックを絡ませてある。感染症にかかって知性を冒され凶暴になった人間たちが各地で街を破壊する。それにたいして国は無策である。膨大な数の韓国人が犠牲になる。犠牲者が迫害者となり、迫害の規模ははてしもなく拡大していく。その危機に一組の父子が巻き込まれる。その結果父親は死に、娘だけがサバイバルを果たすというような内容である。そういう点ではサバイバル映画ともいえる。

感染症がパニックをもたらす現象をパンデミックというので、この映画はパンデミック映画といってよい。パンデミックをテーマにした映画としては、日本の瀬々敬久の「感染列島」が思い浮かぶ。瀬々の映画はコロナ騒ぎを先取りしていたような先見性を感じさせたものだが、この映画「新感染」は、グロテスク趣味に陥っているきらいがある。

ただ一つ、その感染症の原因が、ある化学会社の薬品開発から生まれたということになっており、企業の社会的責任を意識させるようには出来ている。そのアイデアは、ポンジュノから得たのかもしれない。ポンジュノは「グムエル」の中で、米軍の化学研究の副産物として化け物が生まれたということにしていたので、米軍の韓国の企業に置き換えれば、同じような雰囲気を作ることにつながる。ポンジュノの場合は、日本の「ゴジラ」を意識していたと思うが、この映画は「ゴジラ」までは先祖返りしていない。

荒唐無稽に見えるのは、純粋な娯楽映画として作られたせいだろう。とにかく人間の化け物がでてくるだけ、不気味さもひとしおである。




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