壺齋散人の 映画探検 |
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2019年の韓国映画「愛の旋律(チョ・ソクヒョン監督)」は、現代韓国社会に生きるシングル・マザーとその一人娘をめぐるささやかな物語を描いた作品。母親は、若いころに歌手を目指したが、妊娠したことでその夢が破れ、また妊娠させた男に去られて、一人で娘を育てる。その娘が成長すると、やはり自分のように音楽好きになることに、運命の皮肉を感じる。娘は父親の庇護を受けて、音楽家の道を進む、というような内容である。 これといって迫力を感じさせない。韓国では、シングルマザーの直面する困難は、日本とたいして変わらないと感じさせる程度である。ただ、母親が生活を楽にするために、マルチ商法の片棒を担ぐようになり、そのあげくに人生が大きく狂わされるとうところに、韓国なりの特異事情を感じる。 時代背景は、1978年を起点とした20年間というふうに設定されている。この時代は韓国にとっては、かつての日本の高度成長時代のように活気のある時代であった。その活気に煽られてマルチ商法が横行したのであろう。それが、1990年代末の金融危機がきっかけになって破綻する。その頃は、日本でもバブルがはじけて、いわゆる失われた30年に突入する時期にあたるから、この映画の中の韓国社会の破綻を他人事として見逃すわけにはいかない。 |
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