壺齋散人の 映画探検
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トルコ映画「ブレイブ・ロード名もなき英雄」 
朝鮮戦争に参戦したトルコ人



2017年のトルコ映画「ブレイブ・ロード名もなき英雄」は、朝鮮戦争に参戦したトルコ人兵士と、親を失って孤児となった朝鮮人少女の物語である。朝鮮戦争にトルコが参加したことはあまり知られていないのではないか。この戦争は、基本的には、朝鮮半島の内戦にアメリカが介入したというものだが、そのアメリカは、単独で介入するよりも、国連軍による介入という方法をとった。時あたかも冷戦の混乱で米ソ対立が激化しており、国連は事実上アメリカのいいなりだった。そこでアメリカは、国連軍の創設に成功し、それへの参加を各国に呼びかけたところ、トルコが一番最初に手をあげたという歴史的経緯がある。トルコがなぜ、朝鮮戦争へかかわる気になったのか、トルコ史に詳しくない小生にはわからない。

映画は、トルコ南部イスケンデルンに暮す若者たちが、朝鮮の戦場に派遣されるところから始まる。この仲のよい若者たちは、さっそく前線に配置され、北朝鮮軍や中国軍と戦うことになる。その戦いの最中、戦場にひとり取り残された少女を見つける。親を失って孤児になった少女だ。その少女を見つけたスレイマンは、彼女を部隊に連れ帰り、アイラと名付けて可愛がる。そのうちアイラはうちとけて、スレイマンを慕うようになる。かれらは父娘のような関係になるのだ。

朝鮮におよそ一年滞在したころ、別の部隊に引き継いで帰国することになる。スレイマンは、アイラを連れて帰りたいのだが、軍はそれを許さない。そこで、アイラを孤児施設にゆだね、かならず迎えに戻ってくると約束する。だが、その約束を果たせないまま、数十年がたった。スレイマンは心に呵責を感じるがいかんともしようがない。そんな折、朝鮮戦争60周年を記念したプロジェクトが持ち上がる。スレイマンとアイラとの辛い別れをモチーフにした映画を作ろうというプロジェクトだ。そのプロジェクトの効果として、スレイマンは60年ぶりにアイラと再会することができ、かれらは涙にむせんだ、とうような内容である。日本にこれをあてはめれば、中国残留孤児をめぐる話に似ている。

トルコ人は、自分がどんな理由で朝鮮で戦争をしているのか、あまりよくわかっていないようだ。だいいち敵、つまり北朝鮮と中国のことを、ほとんど理解できてもいない。かれらが休暇で東京見物をするシーンがあるが、東京の町にはチマチョゴリをきた女性たちが歩いていたり、また、東京の宴会場は中国風で、横浜大飯店のように見える、といった具合である。そんなわけだから、トルコ人が中国人と闘う理由はまったくないというふうに伝わってくる。変な映画である。




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