壺齋散人の 映画探検
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巴里祭 ルネ・クレールの叙情映画



ルネ・クレールの1932年の映画「巴里祭(Quatorze Juillet)」は、「巴里の屋根の下」に続くパリを舞台に若い男女の恋愛模様を描いた叙情的作品。ほとんど劇的な要素を含まないので、それだけ叙情性の度合いが高い。世界の映画史上もっとも叙情性に富んだ作品といえよう。日本でも公開当時から絶大な人気を博したという。とりわけ、全体を通じて絶えず流される主題歌(A Paris dans chaque faubourg) は、いまでも歌われることがある。

巴里の下町に暮らす若い男女の恋がテーマである。男はタクシーの運転手、女は花売りをしており、二人は一緒にダンスをするなどの恋人同士である。そこへ男の昔の女が現れて二人の関係を壊してしまう。女は花売りができなくなってカフェの女給をつとめ、男はならず者の仲間に入ったりして、二人はますます引き裂かれてしまう。そのうち、男の仲間が女のいるカフェに強盗に入るといった事態が起きる。

それでも互いに相手を忘れられない。女は再び花を売るようになり、沢山の花を摘んだ車をひいて町を売り歩く。そこへ再び運転手に戻った男の運転するタクシーが突っ込んでくる。大勢のやじ馬が集まってくる中、二人はしっかりと結ばれる、というような内容である。

タクシーが花車に突っ込んで大勢の人々が集まってくるシーンがこの映画のハイライトである。小生はこの映画を遥か昔に見たのだったが、いまでも記憶しているシーンは、花車に大勢の人々が集まってくる場面なのである。

主演のアンナを演じたアナ・ベラは、「ル・ミリオン」でベアトリスを演じていた。なお、タイトルはフランス革命の記念日であるが、この映画に革命記念日の雰囲気はうかがわれない。




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