壺齋散人の 映画探検
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宮本君から君へ 恋人を強姦された男の復讐



2019年の日本映画「宮本君から君へ(真利子哲也監督)」は、恋人を強姦された男が、強姦した相手に復讐するさまを描いた作品。凄惨な暴力シーンが話題になったが、それ以上に世間を騒がせたのは、日本芸術文化振興会がこの映画への補助金の交付を取り消し、それに対して制作者側が訴訟を起こして、最高裁で原告が勝ったということである。振興会が助成金取り消しの理由にあげたのは、出演者の一人ピエール滝が薬物使用で逮捕されたことだ。一審では原告勝利、二審では原告敗訴、最高裁で逆転判決という劇的な経緯をたどった。

映画自体は、復讐にからむ暴力が迫力を感じさせるが、全体としてこれといった特徴があるわけではない。普通の男女の結びつきが平板に描かれるにすぎない。ただ、暴力シーンはかなりインパクトがある。というのも、暴力のイメージとはまったく結びつかない池松壮亮が、マッチョなイメージのピエール相手にけなげに戦うからである。まともに戦ったらとても勝てない。じっさい最初に挑んだ時には、完璧にノックアウトされ、前歯を三本も折られてしまうのである。

その後いろいろと準備をして、再度戦いを挑む。その時にものされそうになるが、ほんのちょっとしたきっかけをつかんで相手の金玉に一撃を加える。これが功を奏して相手は無力化される。無力化した相手を恋人(青井優)のところに運んで行って、復讐に成功したことをほめてもらう、というような内容である。

池松は、「夜空はいつでも最高密度の青色だ」のイメージが強烈で、絶叫型の演技が得意といえるが、この映画の中でも絶叫しまくっている。恋人役の青井もまた絶叫しまくる。彼女は何せ、池松が寝ている脇で、ピエールにやられるのであるから、その無念さを絶叫せずにはいられないのだ。

なお、池松は前歯が三本欠けた顔を見せる。じっさいに欠けている。かつて田中絹代が役作りのために前歯を折ったことがあって話題を呼んだものだが、池松も役作りのためにわざわざ前歯を折ったのであろうか。




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