壺齋散人の 映画探検
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荒井晴彦「火口のふたり」: 従兄妹同士の性愛



荒井晴彦の2019年の映画「火口のふたり」は、従兄妹同士の性愛をテーマにした作品。日本では、血のつながりが近い従兄妹の間の性愛は、強いタブーとはいえないまでも、忌避される傾向が強い。だから、愛し合ってしまった従兄妹のカップルは、それに悩んだ挙句、あきらめることが多い。この映画は、そんな、一度は愛し合った従兄妹同士のカップルが、焼棒杭に火がついたように激しく愛しあうところを描く。

東京でさえない暮らしをしている男が、従妹の結婚式に呼ばれて故郷の町(東北のどこか)に帰る。そこに待っていた従妹は、男をセックスに誘う。彼女は数日後に自衛隊員という別の男と結婚式をあげる予定なのだが、その前に、かつて抱き合った従兄と名残のセックスをしたいと思うのだ。それを彼女は「体の言い分」に従うという。体とは下半身のことだろう。だから下半身が私を駆り立てて、あなたとのセックスを要求するということになる。

彼女は、一度だけで終わらせるつもりでいたのだが、挑発された男のほうが収まらない。そんなわけで、結婚式の直前まで、かれらは女の新居をねぐらにしてセックスにふける。この映画のほとんどは、彼らの濃厚なセックス場面からなるのである。だから、実質的には「ポルノ映画」と言ってよい。若い人ならともかく、小生のような枯れた老人には、セックスシーンを続けざまに見せられるのは、退屈なものである。

そのセックスというのが、きわめて激しいものだ。あまりに激しくやるものだから、女の膣の膜は腫れあがり、男の亀頭にもヒビのようなものができるありさまだ。そんなに激しくセックスしたら、かえって苦痛のほうが大きいと思うのだが、この男女は、苦痛なんのそのと、激しいセックスに励むのである。それも路地の狭い空間で立ったままやるとか、とにかくすさまじい。それを通りがかった子供たちが興味深そうに見る。そういうところは女の子のほうがませているようだ。

結局女は、自衛隊員との婚約を解消し、その従兄と結ばれることを選ぶ、彼女は、結ばれた記念に男の種を宿すことを求めるのだ。女には、妊娠した瞬間がわかるものらしい。この女も、それがわかったものとみえ、喜びの声をもらすのだ。とにかくすさまじい映画である。




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