壺齋散人の 映画探検
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柳町光男「カミュなんて知らない」 大学生の映画製作



柳町光男の2006年の映画「カミュなんて知らない」は、大学生たちの映画製作をテーマにした作品。大学の映画サークルが動機なき殺人事件を映画化する過程を描く。学生仲間で監督はじめスタッフや俳優まで分担し、監督役が作成した脚本にしたがって映画作りを進行する。さまざまな学生たちはそれぞれに自分の事情を引きずっている。監督役は恋人からしつこくつきまとわれ、主演役はゲイの傾向があるといった具合だ。また、指導する教授は、死んだ妻によく似た女子学生にこだわったりする。

動機なき殺人がカミュの小説「異邦人」に似ているというので、学生の中には「異邦人」を読む者もいる。だが、やはり映画の中の殺人は、異邦人の殺人とは違う。その違いと言うか、独特なところを、主演役が自分なりに解釈して演じる。

映画は完成するが、それによって学生たちに達成感があるかといえば、そうでもないらしい。かれらには虚無的なところがあるのだ。

そんな具合に、ちょっととりとめのなさを感じさせる映画である。なお、映画製作の舞台は立教大学のキャンパスである。立教にはシックな建物が多いので、映画の雰囲気をもりたてるのに一役買っている。




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