壺齋散人の 映画探検 |
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岡本喜八の1964年の映画「ああ爆弾」は、ミュージカル仕立てのドタバタ喜劇である。ミュージカル仕立てとはいっても、西洋風のミュージックではなく、和風のミュージックが主体である。なかでも、狂言小謡が幅を利かせている。その他に三味線入りの浪花節とか、能の謡曲とか、歌舞伎の義太夫まがいのものとか、なにしろ日本の伝統的な音曲が全編に流れ、非常に賑やかな感じの映画である。 大した筋書きはない。無事刑務所つとめを果たして娑婆に出てきたやくざの親分(伊藤雄之助)が、新興やくざに事務所を乗っ取られたことに腹をたて、復讐を図るものの、なにせ老いの身でははでな立ち回りもできず、思惑は空回りするばかり。その苦境に感じた男が、爆弾を作って復讐に協力しようとする。その男は刑務所で知り合い、一緒に娑婆に出てきたのである。しかし、爆弾を作ったはいいが、その爆弾がさまざまな人々の手をめぐるうちに、自分自身に舞い戻ってくるといったような内容である。 見どころは、伊藤雄之助のとぼけた演技と、和風ミュージックの使い方だろう。音の部分については、見どころというより聞き所といったほうがよい。聞き所のうちでも、狂言小謡はなかなか効果的に使われている。なにしろ、小謡ばかりか、狂言のセリフ回し仕草まで取り入れられている。その狂言を伊藤雄之助がうまくこなしている。 娯楽に徹した愉快な映画である。岡本の遊び心が素直にあらわれた作品で、本人も楽しみながら作っていたと思う。 |
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