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忠臣蔵外伝・四谷怪談:深作欣二



忠臣蔵と四谷怪談は、お互いに全く関係のない話だ。一方は元禄時代に起きた実話だし、一方は架空の怪談話だ。その本来関係のないものを結びつけて、深い関係があるかのように仕立てた映画を、深作欣二が1994年に作った。それが「忠臣蔵外伝・四谷怪談」である。

無関係のものを関係させたほかに、もとの形からかなり逸脱させてもいる。民谷伊右衛門(佐藤浩市)は赤穂藩の家臣ということになっているし、お岩(高岡早紀)は娼婦ということになっている。伊右衛門が金に目をくらまされた女は、井伊家の家臣の孫娘(荻野目慶子)で、しかも聾唖者である。その祖父の意向で、お岩は毒を盛られる。伊右衛門が殺意をもって殺させたわけではない。むしろ伊右衛門は、お岩への未練を捨てきれない程なのだ。

こんな設定で物語は進む。伊右衛門は、大石内蔵助を暗殺しようとして、返り討ちにあう。そして幽霊になった姿で討ち入りの現場に立ち会う。そこへお岩の幽霊も現われて、戦いに一役果たす。彼女は赤穂の浪人たちに肩入れをする。というより、自分を殺した側の伊井家を憎んでいるのだ。

赤穂の浪人たちが目的を果たした様子を見守りながら、伊右衛門とお岩は仲直りする。その時お岩の顔は、あの醜い姿からもとの姿へと戻るのだ。そんな二人の様子を、聾唖者の娘やその祖父たちが見守る。その顔には敵意はない。死んでしまっては、敵意もくそもないからだ、といった具合に。

こんなわけで、忠臣蔵や四谷怪談を知っている観客は、それとは全く違う物語を見せられて、面食らうかもしれないが、それは原作に縛られすぎているからだろう。原作とは全く違った物語と思えば、また異なった目で見られるのではないか。映画としては、結構面白く作られている。そこは深作の映画職人らしいところを感じさせられる。




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