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山田洋次「キネマの神様」 映画に青春をかけた男たち



山田洋次の2021年の映画「キネマの神様」は、映画に青春をかけた男たちの物語。その男たちが老年になって、再び映画への情熱に目覚めるといった内容だ。男の一人を沢田研二、もう一人を小林稔侍が演じている。かれらの青春は松竹の撮影所を舞台としていた。その舞台で彼らは一人の女性をめぐって葛藤する。老年になっても、三人の関係は崩れない。三人はあいかわらず、映画を通じて結びついている。要するに映画を賛歌する映画なのである。松竹の山田洋次の2021年の映画「キネマの神様」は、映画に青春をかけた男たちの物語。その男たちが老年になって、再び映画への情熱に目覚めるといった内容だ。男の一人を沢田研二、もう一人を小林稔侍が演じている。かれらの青百年記念に作られたというから、映画賛歌になるものわからぬではない。

沢田研二の若いころを菅田将暉、沢田の妻宮本信子の若いころを永野芽郁、小林稔侍の若いころを野田洋二郎が演じている。沢田の役は当初志村けんが演じることになっていたが、志村がコロナで死んだため、急遽沢田に白羽の矢が立ったという。役柄としては、志村らしくコミックなものだったと思われる。沢田にはそうした雰囲気を、自然に感じさせることはむつかしいので、志村にとらわれず、沢田なりの雰囲気を表に出したということらしい。沢田は、俳優としては大根の部類だが、この映画では、なんとかまともな演技をしている。

もう一人大根役者らしいのが出てくる。北川景子である。北川は美形と言っていいのだが、演技が下手なので、折角の美貌がはえない。その北川演じる女優は、周囲のものから大根といわれ、自分でもそれを認めているのだ。

沢田や北川とは違い、沢田の妻を演じた宮本信子や小林稔侍は年季の入った演技を見せている。また、永野の演技もよい。

戦前の撮影所で、出水組とか小田組といったスタッフ集団が出てくる。出水組はロングショットの長回しが持ち味のようなので、溝口健二の作風を彷彿させる。一方小田組は、当代映画界を代表するように描かれている。それは小津安二郎を彷彿させる。溝口は松竹ではなく日活だったが、そんなことは、映画全体としては些細なことだと言いたいようである。

キネマの神様というのは、沢田の若いころに菅田が監督としてのデビュー作につけようとしたタイトルである。その映画は完成することがなかったが、老人となった沢田が、孫の協力を得て現代風にリメイクし、それが脚本賞をとることになる。映画賛歌に相応しいタイトルといえる。




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