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新海誠「天気の子」:ファンタジー・アニメ映画



新海誠の2019年のアニメ映画「天気の子」は、家出少年と孤児姉弟の出会いと共同生活を描いた作品。超能力をだしに使ったファンタジーものだが、子どもが生きづらい今の日本社会への批判にもなっており、アニメ映画としては、考えさせられる作品である。

どこかの離島から家出してきた少年ホダカが主人公。かれは十六歳である。船の中でヘンな大人と知り合いになり、後にかれの厄介になる。一方、東京の町をうろついているときに、少女ヒナと出会う。ヒナはカフェでアルバイトをしており、金のないホダカに食べ物を差し入れてくれたのだ。

いろいろなことが起きた後、ホダカはヒナ及び彼女と一緒に暮らしている弟アメと親しくなる。ヒナには、雨天でもたちどころに晴天にする不思議な能力があった。その能力を活用してビジネスを始めたところ、それが大当たり。だが、ヒナは自分の存在を危険にさらしながらその能力を発揮していた。その危険とは、能力を使うごとに、身体が透明になり、ついには消えてしまうというものだった。

三人の子どもたちは、様々なトラブルに巻き込まれたあげく、警察から追われるようになる。警察はホダカを、銃器不法所持の疑いで、ヒナとその弟は児童福祉法違反のかどで追求するのだ。かくて警察に追われたかれらのうち、ヒナは透明になって昇天してしまうし、ホダカもその後を追って昇天してしまう。ところが、二人は再び地上に戻ってきて、いったんは別々に生きるが、やがては結ばれるといった内容である。

要するにファンタジーを描いた作品なのだが、そのファンタジーが実はホダカとヒナとの共同の夢だった、と感じさせられるように作られている。なお、日本社会への批判は、子どもを食い物にする連中の横行とか、その子どもたちを救うのではなく始末することに血眼になる警察への距離感としてあらわれている。




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