壺齋散人の 映画探検 |
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「ドレミファ娘の血は騒ぐ」から十年後、黒沢清は低予算映画のシリーズものを作った。「勝手にしやがれ」と題したシリーズもので、六本からなり、いずれも80分程度のこじんまりした作品だ。正義の味方を気取った二人組みの若者が、やくざ相手に活躍するといったもので、一時期流行ったやくざ映画のパロディと言ってよい。 「勝手にしやがれ!英雄計画編」は、シリーズの最終作。例のとおり、正義の味方の二人組が悪と戦うというような設定だ。悪といっても、偽の悪と本物の悪とがある。偽の悪は、やくざを気取った男のことで、この男は住民から恐れられることに快楽を感じている。しかし根は悪党ではない。 本当の悪党は、別にいる。地元選出の代議士だ。その代議士の秘書になった男は、二人組みの知り合いで、しかもその妹と若者たちは仲良し同士なのだが、秘書がワル知恵を働かせて、色々いやがらせをする。それを跳ね返しながら正義を実現するというのがおおまかの筋書きだ。 どうということもない平凡な映画だ。興業的にもあまり成功しなかったようだ。それでも黒沢がこのシリーズにこだわったのは、映画作りを継続させてくれるという意義を感じたからだろう。 隅田川周辺の風景が出てくる。桜橋方面から言問橋を映し出した風景は、わずかに墨田区役所の高い建物が映っている外は、平坦な建物が連なっている。一方、地元の町会がある原っぱは、北新宿の再開発予定地のように見える。そんなところに、東京の変化を感じさせられる映画である。 |
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